『古事記』解釈のキーワード②
画像について
広報誌「おかべ」81号(1977年11月)に 掲載された「わが名は ヰヒカ」に そえられたイラストで、作者は
梅本 公美子さん です。この ブログでは 「尾 ある人、ヰヒカ」(2012.9.18)でも 借用させて いただきました。
「シリアテ用 毛皮と ピッケル」が 山男
スタイルの 基本 だろうと 思いますが、毛皮の形は もっと 短い 四角形 だった かも しれませんし、ピッケルも「鹿の角」そのもの 、もしくは 現代の ピッケル風の もの だった かも しれません。
「尾
生ひたる 人」、名は
ヰヒカ
『古事記』中巻「神武東征」の
くだりで、神武天皇が いろんな 人物に出会います。タカクラジ・ニヘモツノコ・ヰヒカ など、いろんな 職業分野に わたる 人たち です。ここでは、まず「シッポが 生えた人」として
ヰヒカ[井氷鹿]の 実態に せまります。
ところで、「シッポが
生えた人」は
ヰヒカ
だけで
なく、イハオシワクノコ[石押分之子]も そうだと 書かれて います。倉野憲司 校注本 (岩波文庫)では、「尾のあるような恰好に見えたのであろう」と
して
います。いったい
どんな
職業の
人物
だった
ので
しょうか?そう
考えて
みると、つい
最近まで
そんな
スタイルの
人たちが
いました。腰に
シリアテ用の
毛皮を
垂らし、ツルハシ(ピッケル)を 手にした 山男・山師 たち です。一年中 山や川を わたりあるく のが 仕事。この 毛皮の おかげで、どんな
場所
でも
安全に
腰を
おろして作業したり、休息したり
できます。
ヰヒカ[井氷鹿]は「井を 引く 人」
ヰヒカに ついて、倉野憲司 校注は「井光の意」、つまり「井戸が
光って
見えた
から」と
解説して
いますが、わたしは
もう
すこし
つっこんだ
解釈を
しています。
ヰヒカ[井氷鹿]=「井を 引く 人」と 解釈すべきと 考えています。
ヰは 井戸。ヒカは、動詞
ヒク[弾・引]の 未然形、兼 名詞形。ヒク もの の意。
ついでに いえば、ヒクは、「ヒ[日・氷・梭]+ク[來]」の 構造で、「するどい
ハモノ
や
ヒ
カリ などで 攻撃する」姿。
現代人に 分かりやすく 表現すれば「井戸掘り
職人」。井戸を
掘る
技術は、やがて
金・銀・水銀
など
鉱物資源
開発技術に
つながります。「わが名は
ヰヒカ」と
いう
のも、その
技術者
集団の
リーダー
としての
ホコリを
こめての
ナノリと
考えて
よいでしょう。
ヰヒカに とって、頼みの ツナと なる ものが ツエ[杖]・ツノ[角]。じっさいは
シカのツノ などが 使われ、やがて 鋼鉄製の ものと 交替したと 考えられます。
この ツエは、使えば 使う ほど、ピカピカ 光って きます。かたい 岩石を ツキサク作業では、ピカピカ
火花が
散ります。「その井に光有り」と
記された
場面です。
ヰヒカと ならんで「シッポが
生えた人」と
された
イホシワクノコに ついて、倉野憲司 校注は「穴居民をいうのであろう」と して いますが、わたしは 前後の 文脈 から 考えて、これも 職業を 表わす ナノリと 解釈して います。現代風に
いえば、「土木建設
技術者
集団(の棟梁)」と いった ところ です。
まとめて いえば、ヰヒカを
ふくめ、水運・水産・農林・鉱山開発・土木建設
など、もろもろの
分野に
わたる
技術力・人間力を
天皇の
まわりに
組織する
ことに
よって、ヤマト政権が 誕生した と いう ことに なります。
漢語音
との 比較
から
ヤマトコトバの ハ行音は、もともと h-音 では なく、p-(ph-)音 だった と されて います。それで、ヒクや ヒカは p-k音 グループに 分類されます。この p-k音は、漢語 でもたくさんの 単語家族を 形成して います。その 一つに ヘキ[辟]グループが あります。
ヘキ(ヒャク) piek辟biが 基本で、この 字形を もつ 語に ヘキ[劈・僻・壁・霹・闢] などが あります。
ヘキ[辟]は、「人+辛(ハリ
などの
ハモノ)」の
会意モジ。人の
処刑を
命じ、平伏させる
君主。ヘキの
音は、平らに
横に
ひらくの
意。→辟王(君主) ⇔ヒコ[日子]。
ヘキ[劈]は、「ハモノで ヒキサク[引裂]」姿。⇔ヒク[弾・引]。pick.
ヘキ[僻]は、「横に 平らに 開く」こと から、「横に ヒキズル、カタヨル」姿。→僻地。
ヘキ[壁]は、「横に 平らに 開く」姿の カベ。
ヘキ[霹]は、「ピリピりと 裂ける」姿。また、「カミナリが 落ちる」姿。→(晴天の) 霹靂
⇔ビックリ 仰天。
⇔ビックリ 仰天。
ヘキ[闢]は、「戸を 横に 平らに 開く」姿。→開闢。
ヘキ[躄]は、「足を 横に 平らに 開く、ヒキズル」姿。いざり。⇔ヒク。アシヒキ[足病]。
英語音
との 比較
から
日本語 ヒク[弾・引]と 英語pickとの あいだ には、おなじ p-k音語 と して、みごとな対応関係が 見られます。
ヒク:pick// ヒカ:picker// ヒキ:picking
ヰヒカに ついても、「井を
引く
人」=well-pickerと 解釈する ことが できます。
ヒゲ・クヒ・pikeの 話は 次回へ
ついでに「ヒゲ と クヒ」、「ヒゲ と pike」の 話も する 予定に して いましたが、時間が なくなり ました。次回に まわします。
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