2015年7月30日木曜日

漢語・英語の m-k音


m-k音の 意味を 考える②…
 
 
 
 
日本語周辺の m-k音語
これまで 日本語(ヤマトコトバ)の m-k音に ついて、マキムクを 中心に 基本義を さぐって きました。しかし、現代日本語の 中には、すでに 多数の 外来m-k音語(漢語や英語など)が はいりこみ、定着して います。したがって、現代日本語の 音韻感覚を 全体として とらえる ためには、それら 外来語の 出身母体に あたる 言語の 音韻感覚に ついても、ひととおり チエックして おくことが 必要に なって きます。ヤマトコトバの感覚と 外来語の 感覚との ズレが 限度を こえると、コトバの 流通回路と しての 日本語が パンクして、機能不全と なる おそれが あります。
ここでは さしあたり、日本語の 周辺言語に あたる 漢語と 英語の m-k音に ついて、その 基本義を さぐり、日本語との 共通点の 有無を 考えて みたいと 思います。
 
m-k音の 漢語
 現代漢語に、m-k音を もつ 音節は ありませんが、上古漢語の 段階でm-k音の 漢語が多数 成立して いた ことが 分かって います。その後 語尾子音 -k 脱落して CV型(母音終わり)の 音形と なりましたが、意味用法と しては もとのm-k音の 音韻感覚の まま 使われて いる ようです。
これまで 採集した m-k 漢語を 日本漢字音の 順に ならべ、その 基本義を さぐることに します(解説は、主として『学研・漢和大字典』に したがい、発音表記は 日本漢字音・上古音・漢字・現代音の順)。
 
マ・バmagma. うま。 *古代中国で 馬の 最も たいせつな 用途は 戦車を 引く ことで あった。バカでかい 威力・生命力を もつ 動物。向こう 見ずに つき進むとの 意を 含み、武・驀・罵と 同系の コトバ。⇔マク[娶・巻]・マグ[]・ムク[]
マウ・バウmiangwang. ほろびる。なくなる。甲骨文字は 人印を丨印(衝立〕で隠す さま。あった ものが 姿を 隠す、見えなく なるの 意。⇔マク[]・マカル[]・ミマカル。
マウ・バウmiuangwangわすれる。意識に 存在しない こと。
マウ・バウmangmang. 忙しい。あれこれと 対応に 追われ、心が  まともに 存在しない さま。⇔マガ[曲・禍]・マガフ[乱・紛]
マウ・バウmiuangwang. みだりに。女性に 心が まどわされ、われを 忘れた ふるまいを する さま。⇔マガ[曲・禍]・マガフ[乱・紛]・マグ[]・マガル[曲・枉]
マク・バク・モ・ボmakmu. くれる。くれ。おそい。ない。「草むらが マク[幕・膜]に なって (草にマギレ[])、その ムコウ[向]が 見えない」さま。⇔マク[罷]。 
マク・バクmakmu 巻きつける(もの)。おおう(もの)。「草むらが マク[幕・膜]に なって (草にマギレ[])、その ムコウ[向]が 見えない」さま。⇔マク[巻]。 
 
ミャク・バクmakmo. 馬が がむしゃらに つき進む(さま)。
ミャク・バクmluekmai. むぎ。 *西方 から 伝来した 食品。マギもとめて いた 天の メグミ。は、穂が 左右に 出た ムギを 描いた 象形モジ。は、それに 足を そえた 会意 形声 モジ。ライmleglaiは、もと ml- という 複子音を もつ コトバで、やがて 頭子音m- 脱落した ライ[]と、l-子音が 脱落した ミャク・バク[]とに 分かれ、ライ[]は「來る」の 意に 専用された。その 音形・字形変化の 経過は、そのまま「マギもとめて いた ムギ[] マカリコシタ[罷來・伝来] 歴史事実の 証言と 見る ことが できる。⇔ムギ[]・マク[罷]。
 
ミャク・ベキmekmi. もとめる。目を 細めて、ものを 見定め ようと する さま。⇔マグ[].
 
ム・ブmiuagwu. ない。ない こと。 「亡(ない)+音符舞の 略体」の 会意 兼形 モジ。「衣の 袖に 飾りを つけ、その 袖を ひるがえして 舞う」女性の 姿を えがく。もと [] 意味 だったが、マウ[]ときの 心理状態 から [無私・無心] などの 意味用法が おおく なって きたので、同音の [] 字形を つくって使い分ける ように した。⇔マク[]・マカル[]・ミマカル[身罷]
ム・ブmiuagwu. まう。*舞は「舛+音符無」の 会意 形声 モジ。セン[] 左足と 右足を 開いた さま。無は、人が 両手に 飾りを 持って まう さまで、幸いを 求める 神楽まいの こと。ボ[] (求める) 同系。マウ[]は、もともと 神の メグミを マギ もとめて、手足を 体に マキつける 行為。キリキリマイして、神に 身を ささげる、参る (舞い 入る)、マカル[罷・被巻] 姿。⇔マク[巻・罷]・マグ[]・マフ[]
ム・ブmiuagwu. 生い 茂った 雑草。荒れる。*「艸+音符 (ない。おおい 隠されて見えない)」の 会意 形声 モジ。⇔ムグラ[]
ム・ブmiuagwu. たけだけしい。戦争。武器や 兵士。 *「戈(ほこ)+止(あし)」の 会意 モジ。戈を もって 足で 堂々と 行進する さま。ない 物を 求めて がむしゃらに 進む 意を 含む。⇔クク[向・剥]・ムカムカ・ムクムク。
ム・フ・ブmiuagwu. みこ。かんなぎ。 *「工+人二人」の 会意 モジ。工印は、神を 招く 技術を 示す。神を マギ もとめて マウ[舞]ミコ[]マグ[]・ミコ[巫]。
ム・ボウmiogmou. もとめる。ます。ふえる。牛が モウと 声を 出す さま。
ム・モ・ボウmogmu. おす(牛)。*「牛+士」の 会意。牡牛の 性器が ムクムク・モグモグ 動く さま。
 
メ・バmagma. ののしる。網を カブセル、マキツケル 姿。
 
モ・ム・ボmagmu. くれ。くれる。くらす。「草むらに 日が 沈む、マク・マカル[]」時間帯。マク[娶・巻・罷]・マカル[]
モ・ボmagmu. *草葉の カゲに マカル[] 姿。「草むらに マギレ[] 土盛り」。死者が マカル[] ところ。マク・マカル[]
モ・ボmagmu. したう。「心+音符莫」の 会意 形声。身近に ない 物を 得たいと 求める 心。マグ[]
モ・ボmagmu. つのる。「力+音符莫」の 会意 形声。ない ものを ある ように しようと 努力する こと。マグ[]
モク・ボクmukmu. * から 夏に かけて 日光を ムカエ つづけた 木は、ムクムクと 枝を はりだし、葉を しげらせ、生命力を ムキだしに する。⇔ムク[向・剥]・ムクムク・ムクメク[蠢動]
モク・ボクmiukmu.  朝の 日光が ヒトの [] 刺激し、マブタを マキあげ、メダマを ムキだしに する。ムク[向・剥]・ムクムク・ムクメク[蠢動]
モク・ボクmiuekmu.  家畜を飼う。やしなう。まき。まきば、オス・メスの 牛・馬・羊 などを マカ[巻・娶]せ、子を 産ませる こと。モ・ボ[母]、マイ・バイ[毎・媒]と 同系の コトバ。牛馬など だけ でなく、人に ついても [牧民・牧師] などと いう。⇔マキバ[牧場](マク[娶・巻] []
 
 以上、これまで 採集できた m-k 漢語に ついて、基本義を マギもとめて きました。もちろん まだ 採集もれの m-k 漢語が たくさん ありますが、基本義は いちおう 出そろったと 考えて います。これまでの 資料から 見る かぎり、日本語(ヤマトコトバ)と 漢語(上古漢語)は 基本的に ほぼ 共通の 音韻感覚を もって いたと 推定して よいと 思いますが、いかが でしょうか?
 
m-k音の英語
   ここまでは、日本語や 漢語の m-k音が どんな 意味を 表わすかに ついて 考えて きました。ここからは、英語の m-k音に ついて その基本義をさぐり、日本語や漢語と比較してみることにします。
 
m-音とk-音、両基本義の連合
いっぱんに 「どんな 語音 どんな 意味 あらわすか?」と いわれれば、「その語音を 発声する とき、発声器官に 生じる 感覚 よって きまる」と いう ことに なります。たとえば m-k音語の ばあい、子音m-, k- それぞれ 独自の 基本義 もって いて、その 連合体 m-k音語の 基本義を 構成する いう わけです。
 m-音の 基本義…クチビルを 閉じ、イキが ハナ から モレル 鼻音。この 調音方法 から、ウム・ウマレル・ミル・ミエル・モレル・メグル・ウメル・コモル などの 感覚を ともなう ことに なります。
 k-, g-音の 基本義…イキの 流れが 舌の 奥で ヒッカカリ ながら 出てクル 破裂音。g- 有声音。その 調音方法 から、カク[掻・懸・書・描・欠・舁]・カグ[]・キク[聞・利・効]・クク[漏・潜]・コク[]・コグ[漕・扱] などの 意味 用法が うまれます。
 
m-k 英語の 基本義
 ここで、A.H.D. フロク「IE語根と その派生語」 解説を 土台に して、日英の m-k音語を 比較し、相関関係を 考えて みましょう。[IE語根][基本義][派生語] 順に 解説されて います(日本語訳は引用者)。各項、*印の あとに ミの 私見を のべます。
mag-(to kneadこねる, fashion形作る, fit適合する) make作る。生みだす。設ける。任命する, mason石工, match1好敵手, mingle入り混じる, among~の間で, mongrel雑種,
magmaマグマ。鉱物や有機物の天然の混合物, massかたまり。集積, amass集める.
makeは、モム・コネル・マク・マゲル など する 作業。マギ[] もとめる シカケ(設備) モウケ[]たり、人に マカ[]せたり する こと。Make つづりを 日本語 ローマ字式に よめば マケと なり、上代日本語 マケ[任・設・儲]に 通じる。つまり、英語make 日本語 マク[任・設](動下二)との あいだに 音韻対応関係 見えて くる。Mingle, among, mongrel3語には、「マギレこむ、マガフ[乱・紛]」姿が ある。⇔マカナフ[]・マケ[] マニマニ・マケミゾ[儲溝]。
magh-(to be ableできる, have power能力がある) may1~かもしれない, dismay勇気をくじく, might1能力。勢力, mainおもな, machine機械, mechanic職人, magic魔術,magus占星術師. この グループの コトバは、もともとm-k(g) だった ものが、そのご -k(g)部分が 脱落したり、他の 子音に 変化したり した ものと 思われる。Might -ghmachine -chなどの つづりが その ことを 証言して いる。日本語の 表記法で いえば、「歴史カナヅカイ」の ような もの。 magic -gは、giantなどと おなじく [dz]音だが、magmaなどでは [g]音と なって いる。Magus [meigǝs] 複数形magi [meidzai]だが、マギと 呼ばれる ことも ある。日本語でも、マガフ[乱・紛]・マギル[]・マグハフ[目合] マズ[]・マジフ[交雑]・マジハル[交雑]との 対応関係 など、よくにた 現象が 見られる。マク[巻・娶]・マグ[覓・曲]・マジワザ(呪詛)make, magi, magicなど とも 総合して、音韻的な 対応関係を さぐる 足場を 固めたい。
maghu- (young person of either sex若者) maid少女, maiden少女. やがてmother なる 能力の ある 人がmaid。日本語でも、ヲトコ (わかい男性) マキ[巻・娶]・ムク[]・マグ[] 相手の 女性を ヲトメ (わかい女性)、マカタチ[侍女] 呼んだ。
mak- (long長い, thin薄い) meager劣る, emaciateやつれさせる, macro-「大規模・威力」などの 意を 表わす 造語要素,  meager emaciatemacro- では、マイナス プラス、まったく 正反対の イメージで、共通の 基本義 など ない よう にも 見える。日本語や 漢語のm-k音でも よく にた 現象が 見られる。原因は、m-子音の 調音方法に 2面性が ある ためと 考えられる。⇔マク[罷・負]・マカル[罷・退・(死亡)]・マケル[]。マク[]。ム[]。マウ[]
marko- (horse) mare1雌馬. 「マル[] (放出。排泄。出産) ことが できる 子」、と解釈 できる。⇔ウマッコ[馬子]
meg- (great偉大な) muchたくさん, magnate磁石, magnitude大きさ, magnum大型酒びん, magnificent堂々たる, magnify拡大する, major陸軍少佐。主要な, majority大多数, mayor市長,majesty尊厳, maestro巨匠, master主人, misterご主人, mistress女主人, maximum最大限, May5月。盛り, mega-「大規模・威力」の意を 表わす 造語要素,
maharajah大王. 前記mak- グループとは  対照的な イメージを もって いる。日漢の m-k音語と 対応する コトバは 見あたらないが、m-k音の プラスの 1面を 表わす点では 共通する 姿が 見られる。⇔マガタマ[勾玉・曲玉]magma// makmu// mekmi.
meigh- (to urinate放尿する) mistかすみ, mistletoeヤドリギ. カスミ[]を、「ミズ(水分) モエ[燃・萌]出る、モレ[]出る」姿と 見ている。ヤドリギも、「あらたな イノチが メキメキ モエ[燃・萌]出る」姿。
meik- (to mix混ぜる) meddle干渉する, medleyごった混ぜ, mestizo混血者, mix混ぜる。巻きこむ, mixture混合物, pell-mellごちゃ混ぜに する, mash押しつぶす. マク・マゲル・モム・コネル など して、ごちゃマゼに する 姿。AB マキこむ ことは、A B マジハル[交雑] こと。やがて マゼコゼに なって、わきから 見ても、AなのかBなのか マガフ[乱・紛] ことに なる。*おなじくm-kグループの 語音ですが、-k音が 他の 子音と 交代する 現象が 見られます。日本語 マガフ[乱・紛] マジフ[交・雑] などの 対応関係を 考える うえで 参考に なります。
(merg-) (boundary境界線, borderへり) mark 1, marquee出入り口 ひさし, mark2マルク, march1行進, marginへり。利ざや. m-k音と いう より、m-r(-k) グループ音と 見る べき かも しれないが、参考までに とりあげる。「メ[] クル[]」、「メジルシを つける」、「ナワバリの メグリを メグル」姿。その 周辺(へり)部分が マージン(モウケ[]) いう ことに なる。⇔マク[]・マグ[求・曲]・マカル[]・マガル[]・メグリ[廻・周]・メグル[]
 
 連日の 猛暑で、なかなか ブログに 集中 できません。ようやく ここまで まとめて みました。このあと、「教育・文芸とやま」の 応募原稿 作成の ため、しばらく ブログを お休みに させて いただきます。なにとぞ よろしく お願いします。