2011年12月27日火曜日

コトダマのサキワイ、2011

流行語大賞発表

なでしこジャパン優勝


 今年の漢字[]
2011年12月13日、北日本新聞記事より


 創作四字熟語




2011年のコトダマ現象
いよいよ年末になりました。ことしの1年間、日本でどんなコトバがサキハヘ(栄え)たか、またそれによって日本の国家・社会にどれほどのサカエ・サキワイがもたらされたか、考えてみたいと思います。つまり、2011年の日本で、どんなコトバが流行し、どんなコトダマ現象がおこり、どれほどのコトダマ効果をあげたかという問題です。てっとりばやい方法として、新聞記事やネットで「流行語大賞」、「今年の漢字」、「創作四字熟語」などをチェックしてみることにします。

流行語大賞発表   
121日、ユーキャン新語流行語大賞審査委員会が今年のトップテンおよび大賞を発表しました。年間大賞は「なでしこジャパン」。以下「絆」「スマホ」「どじょう内閣」「どや顔」「帰宅難民」「こだまでしょうか」「3.11」「風評被害」「ラブ注入」とならびます。

この賞は「現代用語の基礎知識」が選定したもの。1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの、だそうです。その審査委員会は、姜尚中(東大教授)、俵万智(歌人)、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、室井滋(女優・エッセイスト)、やくみつる(漫画家)、箭内道彦(クリエイティブ・ディレクター)、清水均(『現代用語の基礎知識』編集長)で構成されています。

ことしの話題は、なんといっても3.11の大災害のことが中心。流行語大賞に「なでしこジャパン」が選ばれたのも、3.11の災害で落ちこんでいた日本人に元気をあたえてくれたからです。また、大賞候補10語のなかに「帰宅難民・きずな[]・こだまでしょうか・3.11風評被害」の5語がはいっています。いずれも、この大災害のなかで生まれたコトバばかりです。

ことしの漢字[] 
2011年の世相を1字で表わす「今年の漢字」が「」に決まり、日本漢字能力検定協会が1212日、京都市の清水寺で発表しました。選定の理由として、東日本大震災などの大規模災害で、家族や仲間とのきずなの大切さをあらためて知ったことや、ワールドカップで優勝した女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」のチームワークなどがあげられています。2位以下は「災・震・波・助・復・協・支・命・力」の順で、東日本大震災を連想させる漢字がつづきました。

創作四字熟語
128日、住友生命保険が2011年の世相を映した創作四字熟語の優秀・入選作品を発表しました。 優秀作10作品のうち、震災関連が5作、政治関連が1作;
帰路騒然(理路整然)帰宅困難。大地震につづき台風でも。
電考節夏(電光石火)電力不足が広がり、節電を 考えることになった。
天威無法(天衣無縫)災害の前になすすべがない。
愛円義援(合縁奇縁)震災で、海外からも多くの義捐金が寄せられた。
一松懸命(一生懸命)一本の松が復興のシンボルとしてがんばっている。
年年宰宰(年年歳歳)毎年のように総理大臣(宰相)が変わる。

また、入選作40作品の中には、政治関連で賢泥鰌来(捲土重来)、鰌名披露(襲名披露)、社会関連でi悼之意(哀悼之意)iPhone生みの親、スティーブ・ジョブズ氏の死を悼む)、国際情勢関連で欧州憂慮(欧州ユーロ)などがあります。

 さてここで、1990年以来「創作四字熟語」審 員をつとめてこられた 俵万智さん(歌人)のコメントを一部引用します。
20年ぶんの創作四字熟語を振り返って、あんなこともあった、こんな年もあった、と感慨深い時間を過ごしました…東西ドイツの統一や同時多発テロなどの世界的な事件、りんごの台風被害や阪神淡路大震災などの日本をおそった天災…懐かしい流行…スポーツの話題、政治の転換などなど。あらゆるジャンルのできごとを、こんなに効率よく、一目で振り返れてしまうところに、四字熟語の底力というものを、あらためて感じます…
携帯電話やインターネットが、またたくまに普及した20年…道具がどんなに変化しても、それを使うのは私たち人間です。四字熟語や漢字のおもしろさをもとに、時代を切り取る脳トレとして、これからも創作四字熟語が、活気をもって作られていきますように!

流行語の身元しらべ  
こうしてみると、日本の国はまさしく「コトダマのサキハフ(栄える)国」です。万葉集の時代とちがうのは、ヤマトコトバだけでなく漢語や英語などのコトダマが飛びかっていることです。
たとえば、流行語トップテンの内訳を見ると、ヤマトコトバだけのものが3語(きずな・どやがお・こだまでしょうか)。漢語だけのものが4語(泥鰌内閣・帰宅難民・3.11・風評被害)。英語(?)が1語(スマホ)。ヤマトコトバと英語のチャンポン語が2語(なでしこジャパン・ラブ注入)。なお、3.11は、アラビヤ数字の漢語音読みです。

「創作四字熟語」を見ても、優秀作品10編はいずれも漢語ふうですが、入選作品40編のなかには、i悼之意(哀悼之意)・欧州憂慮(欧州ユーロ)・楽舞注入(ラブ注入)のように、ローマ字や英語をとりこんだ作品も見られます。

創作四字熟語と脳トレ
俵万智さんがいわれるとおり、「あらゆるジャンルのできごとを、こんなに効率よく、一目で振り返れてしまう」「四字熟語」の創作活動は、「漢字のおもしろさをもとに、時代を切り取る脳トレとして、これからも」ますます活気をもってくるものと期待されます。
わたしがいちばん注目させられたのは、欧州憂慮(欧州ユーロ)楽舞注入(ラブ注入)の用語法です。ここでは、漢字音ユウリョ[憂慮]と英語音ユーロ[Euro]、また漢字音ラクブ[楽舞]と英語音ラブ[love]をムリヤリ通用させて、「なんとか意味が通じる」ように仕組まれています。
見事撫子大和撫子の場合は、ともにヤマトコトバ同士であり、ミゴトヤマトも語尾が同音で、全体としてゴロあわせができています。帰路騒然と理路整然の場合も漢語同士であり、帰路と理路、騒然と整然がそれぞれ韻をふんでいるので、いかにも漢語らしいゴロあわせができています。欧州憂慮楽舞注入の場合は、音韻感覚のちがった漢語と英語のゴロ合わせをしようということで、それだけ高度な脳トレが求められるのだと思います。

ヤマトコトバの見なおしを!
なでしこジャパンは、ヤマトコトバと英語の合成語。きずな[絆]はヤマトコトバ。欧州憂慮楽舞注入は、漢語と英語のゴロ合わせ。これらのコトバがことしの流行語となり、おおきなコトダマ効果をあげることができたのは、なぜでしょうか?それは、そのコトバを耳で聞いたり、目で読んだりしたとたんに、ある場面が連想され、はげしい感動をよびおこしたからだと思います。

その点から見て、流行語大賞やトップテンになれそうなコトバとしては、やはり日本人の母語であるヤマトコトバが有利です。なでしこジャパンのジャパンはたしかに外来語ですが、いまでは子どもたちもみんな知っているコトバです。きずなの場合も、キズナというヤマトコトバだから「今年の漢字」にえらばれたのであって、漢字音ハンやバンでえらばれたわけではありません。欧州憂慮楽舞注入がトップテンにはいれなかったのは、高度な脳トレによるゴロあわせ技術をもってしても、素材になるコトバ(ここでは外来語同士)そのものの大衆性不足をカバーできなかったということでしょう。とりわけ、ラブ(love)をわざわざ漢字に書きかえたのは「よけいなお世話」だったような感じがします。

おそらく「ラブ注入では、四文字熟語にならないから」ということなのでしょうが、どうしてカナは「文字」とみとめられないのでしょうか?それとも、「万葉仮名で書けばよい」ということでしょうか?日本語とは?ヤマトコトバとは?文字とは?いちど、じっくり見なおしてみてはいかがでしょうか?

2011年12月13日火曜日

21世紀版コトダマのサキワイ

「言霊のさきはふ国:反戦塾」


 「萬葉集、下巻」(角川文庫)


「コトダマぢから」


 「レイキ・現代霊気・REIKI・情報ナビ」


「言霊」(ウィキペディアによる) 



ネットで見る「コトダマのサキワイ」
万葉集の時代と現代とでは、コトバの使い方も変化しているはずですが、実際どれくらい変化したか、あるいはしなかったか?国語辞典の解説だけでは、実態がつかめません。
そこで思いついたのが、ネット上でのコトバヅカイを調べてみる方法です。さしあたり「コトダマ」と「コトダマのサキハフ国」の2項目が、どんなサイト、どんな場面で登場するかを見ます。どんな人たちが、どんな意味をこめて使っているかということです。
その結果、この2項目がわたしの予想以上に、あちこちのサイトに登場していることが分かりました。このことは、21世紀版「コトダマのサキワイ」と考えてよいかと思います。
そしてもうひとつ、キーワードになる動詞サキハフが国語辞典の解説とムジュンした意味用法に変身していることに気がつきました。これはこれで重大問題だと思います。
しかし、さらに考えてみると、「コトバはイキモノだから変化するのが当然」、「自動詞として発信されたコトバが、他動詞として受信され、そのまま一人歩きする。それがコトダマの世界」ということなのかもしれません。
それでは、わたしが見たコトダマ関連のブログを いくつかご紹介します。

「言霊のさきはふ国:反戦塾」
「言霊のさきはふ国」というタイトルにひかれて、こちらのサイトをのぞいてみました。
万葉集から柿本人麻呂の長歌3253と反歌 3254を引用しています。

 葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙せぬ国
 しかれども 言挙ぞわがする 言幸(さき)く
 まさきくませと つつみなく さきくいまさば
 荒磯(ありそ)波 ありても 見むと 百重波
 千重波にしき 言挙す吾は 言挙す吾は
 反歌
 しき島の日本(やまと)の国は言霊(ことだま)の
 さきはふ国 まさきくありこそ
 [
塾頭異訳] 反歌
 日本という国は言葉に魂がある国です。それを大切にすることで幸せになれるはずです。

 [塾頭異訳]というのは、「意訳」か「特異な訳」か、よく分かりませんが、いずれにしても原文に忠実な訳ではなく、塾頭ご自身の見解をのべられたものでしょう。わたしからコトアゲすることはありません。
ここで、わたしがあえてコトアゲしたいのは、「言霊(ことだま)の さきはふ国」という文句の出典についてです。塾頭は、「新訓万葉集下巻」(岩波文庫)から引用したとのことなので、わたしは「万葉集」(岩波書店)の編集者に異議を申したてることになります。
「萬葉集」(岩波版)3254の原文では「事霊之 所佐國叙」と書かれ、書下し文では「ことたま[言霊]さき[]はふ國ぞ」、[大意]では「言霊が幸をもたらす国です」となっています。そして頭注には;

 原文、所佐。タスクルと訓む説もあるが、タスクは助力する意。言霊は助力するものでなく、それ自身の力を発揮するものと思われ、巻五、八九四に言霊能佐吉播布とあるによってサキハフと訓む。

この解説は、論理が一貫していません。原文「所佐國」を「タスクル国」と読むのがお気に召さないようですが、漢文の[所佐]は動詞[](タスク)の連体修飾用法。ヤマトコトバではタスクル(他動詞下二、連体形)と読むのがあたりまえです。
サキハフには自動詞(四段)と他動詞(下二)と両方ありますが、「幸をもたらす国」の意味なら他動詞用法ですから「サキハフル国ぞ」となります。これでは字余り。ゴロがよくありません。自動詞用法なら、「サキハフ国」となりますが、それは「(コトダマが)サカエル国」という意味であり、「幸をもたらす国」の意味ではありません。
人麻呂は、その字余りをきらって、「タスクル[所佐]国ぞ」としたのかもしれません。
ちなみに「萬葉集聡索引・単語編」(正宗敦夫編、平凡社)は、「コトダマ[事霊]タスクル[所佐]国ぞ」というヨミを採用し、「サキハフ[所佐]国」というヨミは採用していません。
念のため、「角川文庫」の「萬葉集」下巻(武田祐吉校註)も調べてみました。ここでも「ことだま[言霊]さきはふ[]國ぞ」と表記され、脚注に「言語の精霊が栄えさせる國だ。サキハフの原文「所祐。旧訓タスクル」と解説されています。
平生古典とは縁のうすい生活をしている人たちは別として、古典研究の専門家で、動詞サキハフの自動詞・他動詞の区別を強調する立場の人たちが、どうしてみずからその原則を踏みにじり、タスクルをサキハフに読みかえたのか?わたしにはガッテンできません。

「コトダマぢから」    
ここで、がらっとフンイキが変わります。
こちら、コトノハ社長北原純子さん(ラジオパーソナリティ、結婚式司会など)のブログをのぞいてみました。

 コトノハ北平の使命は 声と言葉で 勇気と愛につながること!
 女性企業家と主婦とフリーアナウンサーの日々の中で学びを分かち合います!
 言葉が変われば 人生が変わる。 一緒に 人生開拓してみませんか?

北平さんの著書「人生を変える話し方の授業」は、Amazonランキングで「全日本文学で22位、カ行の著者で2位」だったそうです。

「レイキ・現代霊気・REIKI・情報ナビ」   
こちらは、lightsphereさんのブログ。「現代霊気」、「REIKI・情報ナビ」などの用語法に時代の流れを感じます。

 レイキと現代霊気法、レイキヒーリング、アチューンメントについての情報ナビ。“レイイキのある日々”の楽しさとレイキの効果などをわかりやすくお伝えしてまいります。
 (中略)
 レイキシンボルとコトダマ

 レイキには、3つのシンボルと統合シンボルがあります…
 レベル1では、両手を上にあげて、レイキと接続します。
 レベル2では、3つのシンボルとコトダマを伝授します。
 レイキシンボルは、レイキとつながるための受信アンテナのような役割をします。
 シンボルが視覚的であるのに対して、コトダマは音の響きで共鳴します。(以下省略)

たしかに興味はひかれますが、かなり専門的で、むつかしそうです。

「言霊」(ウィキペディアによる)       
わたしがのぞいた中で、いちばんまともな解説をしていたのがこちらのブログです。

 言霊(ことだま)とは、日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと。言魂も書く。清音の言霊(ことたま)は、森羅万象がそれによって成り立っているとされる  五十音のコトタマの法則のこと。その法則についての学問を言霊学という。(中略)
 [概要]
 
声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発す
ると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。そのため、祝詞を奏上する時には絶対に誤読がないように注意された。結婚式などでの忌み言葉も言霊の思想に基づくものである。日本は言魂の力によって幸せがもたらされる国「言霊の幸はふ国とされた。(以下省略)

このあと例のとおり、万葉集894(山上憶良)3254(柿本人麻呂)の歌が引用されています。
このブログを読んだ正直な感想。「他の文化圏の言霊」などの項目もあって面白そうだし、まじめに解説している感じがします。ただし、この解説で読者に「分かった」といってもらえるかどうか、すこし心配です。この記事に対して、ウィキペディアの編集者から、つぎのようなタグがついています。
 この記事は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。
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