2011年12月13日火曜日

21世紀版コトダマのサキワイ

「言霊のさきはふ国:反戦塾」


 「萬葉集、下巻」(角川文庫)


「コトダマぢから」


 「レイキ・現代霊気・REIKI・情報ナビ」


「言霊」(ウィキペディアによる) 



ネットで見る「コトダマのサキワイ」
万葉集の時代と現代とでは、コトバの使い方も変化しているはずですが、実際どれくらい変化したか、あるいはしなかったか?国語辞典の解説だけでは、実態がつかめません。
そこで思いついたのが、ネット上でのコトバヅカイを調べてみる方法です。さしあたり「コトダマ」と「コトダマのサキハフ国」の2項目が、どんなサイト、どんな場面で登場するかを見ます。どんな人たちが、どんな意味をこめて使っているかということです。
その結果、この2項目がわたしの予想以上に、あちこちのサイトに登場していることが分かりました。このことは、21世紀版「コトダマのサキワイ」と考えてよいかと思います。
そしてもうひとつ、キーワードになる動詞サキハフが国語辞典の解説とムジュンした意味用法に変身していることに気がつきました。これはこれで重大問題だと思います。
しかし、さらに考えてみると、「コトバはイキモノだから変化するのが当然」、「自動詞として発信されたコトバが、他動詞として受信され、そのまま一人歩きする。それがコトダマの世界」ということなのかもしれません。
それでは、わたしが見たコトダマ関連のブログを いくつかご紹介します。

「言霊のさきはふ国:反戦塾」
「言霊のさきはふ国」というタイトルにひかれて、こちらのサイトをのぞいてみました。
万葉集から柿本人麻呂の長歌3253と反歌 3254を引用しています。

 葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙せぬ国
 しかれども 言挙ぞわがする 言幸(さき)く
 まさきくませと つつみなく さきくいまさば
 荒磯(ありそ)波 ありても 見むと 百重波
 千重波にしき 言挙す吾は 言挙す吾は
 反歌
 しき島の日本(やまと)の国は言霊(ことだま)の
 さきはふ国 まさきくありこそ
 [
塾頭異訳] 反歌
 日本という国は言葉に魂がある国です。それを大切にすることで幸せになれるはずです。

 [塾頭異訳]というのは、「意訳」か「特異な訳」か、よく分かりませんが、いずれにしても原文に忠実な訳ではなく、塾頭ご自身の見解をのべられたものでしょう。わたしからコトアゲすることはありません。
ここで、わたしがあえてコトアゲしたいのは、「言霊(ことだま)の さきはふ国」という文句の出典についてです。塾頭は、「新訓万葉集下巻」(岩波文庫)から引用したとのことなので、わたしは「万葉集」(岩波書店)の編集者に異議を申したてることになります。
「萬葉集」(岩波版)3254の原文では「事霊之 所佐國叙」と書かれ、書下し文では「ことたま[言霊]さき[]はふ國ぞ」、[大意]では「言霊が幸をもたらす国です」となっています。そして頭注には;

 原文、所佐。タスクルと訓む説もあるが、タスクは助力する意。言霊は助力するものでなく、それ自身の力を発揮するものと思われ、巻五、八九四に言霊能佐吉播布とあるによってサキハフと訓む。

この解説は、論理が一貫していません。原文「所佐國」を「タスクル国」と読むのがお気に召さないようですが、漢文の[所佐]は動詞[](タスク)の連体修飾用法。ヤマトコトバではタスクル(他動詞下二、連体形)と読むのがあたりまえです。
サキハフには自動詞(四段)と他動詞(下二)と両方ありますが、「幸をもたらす国」の意味なら他動詞用法ですから「サキハフル国ぞ」となります。これでは字余り。ゴロがよくありません。自動詞用法なら、「サキハフ国」となりますが、それは「(コトダマが)サカエル国」という意味であり、「幸をもたらす国」の意味ではありません。
人麻呂は、その字余りをきらって、「タスクル[所佐]国ぞ」としたのかもしれません。
ちなみに「萬葉集聡索引・単語編」(正宗敦夫編、平凡社)は、「コトダマ[事霊]タスクル[所佐]国ぞ」というヨミを採用し、「サキハフ[所佐]国」というヨミは採用していません。
念のため、「角川文庫」の「萬葉集」下巻(武田祐吉校註)も調べてみました。ここでも「ことだま[言霊]さきはふ[]國ぞ」と表記され、脚注に「言語の精霊が栄えさせる國だ。サキハフの原文「所祐。旧訓タスクル」と解説されています。
平生古典とは縁のうすい生活をしている人たちは別として、古典研究の専門家で、動詞サキハフの自動詞・他動詞の区別を強調する立場の人たちが、どうしてみずからその原則を踏みにじり、タスクルをサキハフに読みかえたのか?わたしにはガッテンできません。

「コトダマぢから」    
ここで、がらっとフンイキが変わります。
こちら、コトノハ社長北原純子さん(ラジオパーソナリティ、結婚式司会など)のブログをのぞいてみました。

 コトノハ北平の使命は 声と言葉で 勇気と愛につながること!
 女性企業家と主婦とフリーアナウンサーの日々の中で学びを分かち合います!
 言葉が変われば 人生が変わる。 一緒に 人生開拓してみませんか?

北平さんの著書「人生を変える話し方の授業」は、Amazonランキングで「全日本文学で22位、カ行の著者で2位」だったそうです。

「レイキ・現代霊気・REIKI・情報ナビ」   
こちらは、lightsphereさんのブログ。「現代霊気」、「REIKI・情報ナビ」などの用語法に時代の流れを感じます。

 レイキと現代霊気法、レイキヒーリング、アチューンメントについての情報ナビ。“レイイキのある日々”の楽しさとレイキの効果などをわかりやすくお伝えしてまいります。
 (中略)
 レイキシンボルとコトダマ

 レイキには、3つのシンボルと統合シンボルがあります…
 レベル1では、両手を上にあげて、レイキと接続します。
 レベル2では、3つのシンボルとコトダマを伝授します。
 レイキシンボルは、レイキとつながるための受信アンテナのような役割をします。
 シンボルが視覚的であるのに対して、コトダマは音の響きで共鳴します。(以下省略)

たしかに興味はひかれますが、かなり専門的で、むつかしそうです。

「言霊」(ウィキペディアによる)       
わたしがのぞいた中で、いちばんまともな解説をしていたのがこちらのブログです。

 言霊(ことだま)とは、日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと。言魂も書く。清音の言霊(ことたま)は、森羅万象がそれによって成り立っているとされる  五十音のコトタマの法則のこと。その法則についての学問を言霊学という。(中略)
 [概要]
 
声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発す
ると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。そのため、祝詞を奏上する時には絶対に誤読がないように注意された。結婚式などでの忌み言葉も言霊の思想に基づくものである。日本は言魂の力によって幸せがもたらされる国「言霊の幸はふ国とされた。(以下省略)

このあと例のとおり、万葉集894(山上憶良)3254(柿本人麻呂)の歌が引用されています。
このブログを読んだ正直な感想。「他の文化圏の言霊」などの項目もあって面白そうだし、まじめに解説している感じがします。ただし、この解説で読者に「分かった」といってもらえるかどうか、すこし心配です。この記事に対して、ウィキペディアの編集者から、つぎのようなタグがついています。
 この記事は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。
 出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。このタグは20118月に貼り付けられました。

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