「漢字物語」205、イラスト
フクラム 酒樽が フク[福]
きょうは、漢字 [福・富・副・幅] などに 音符として フクまれて いる 字形を とりあげ、p-k音が あらわす 意味の ひろがりに ついて 考えてみます。
まずは、画像「福シリーズの漢字イラスト」を ごらん ください。北日本新聞連載、小山鉄郎編「漢字物語」205、「福の字編」、はまむらゆうさんの イラストです。
小山さんの 解説に よれば、漢字[福]の 字形の うち、右がわの フク[畐]は 「酒樽 など 下部に ふくらみの ある 器」の 姿。左がわの シ[示・礻]は、「神様
への
お供えものをのせる
テーブル」の
姿。そこで、「神様へ
フックラした ものを お供え できる 生活」が フク[福](幸福)という ことに なります。
フ[富]は、「宀(屋根)+畐」の 字形。「先祖の 霊を 祭る ミタマヤ[廟]で、酒樽を
供えている」姿。供えものが
おおく、フクレて 見える 姿 から、「トム・ユタカ」の
意味と
なりました。
フク[副]は、「畐+刂」の 字形。フク[畐] (福・富)を 刀で 二つに 分ける 姿。その 一つを正とし、一つを 副とする こと から、「ヒカエ」の 意味と なりました。
フク[幅]は、「畐+巾」の 字形。布の ヨコ方向の フクレ ぐあい から、やがて すべてのヨコハバ[横幅]を
フク[幅]と いう ように なりました。
p-k音 いろいろ
ここで あらためて、フク[畐] グループの 漢字音を たしかめて おきましょう(日本漢字音・上古音・現代音の
順)。
フクpiuek福fu// フpiueg富fu// フクp’iuek副fu// フクpiuek幅fu//
ごらんの とおり、おなじ 音符 フク[畐]と いいながら、上古音ではpiuek、piueg、p’iuekの 3種に わかれて います。ぎゃくに 現代音 では、音節語尾 子音 -k,- gが すべて 脱落し、すべてが fu 1種 だけに なって います。
この 現象を、どう 考えたら よい でしょうか?わたしは、こう 解釈して います。
上古音の 時代、シンラバンショウ[森羅万象] さまざまな 現象を さまざまな 語音(音形)で とらえて いました。そのうち、「フックラ・フクラム」姿を p-k音で とらえる 習慣がひろまり、フク[畐]を 音符とする [福・富・副・幅] などの 意味・用法が うまれました。
ただし、ある 現象を「フクラム」姿と 見る 人たちも いれば、「フクム」 姿、あるいは「ツツム」姿と 見る 人たちも いる わけで、前回 とりあげたp-k音 漢語
ホウ[包・抱]などは、その1例と 考えて よい でしょう。
この ばあい、「フクラム」と「フクム」は ともに p-k音系の 語音 ですが、「ツツム」はt-t音系 です から、まったく ちがった 音感覚の 語音と いう ことに なります。これまでの ところ、「フクラム・フクム・ツツム」姿に
対応する
t-t音 漢語は 採集できて いません。
音形は 単純化の 方向
上古音の 時代は、p-k音の コトバの 量が はげしく フクレ あがった 時代です。地域に
よって
方言音の
ちがいが
あった
かも
しれませんし、新生事物が
大量に
発生して
同音異義の コトバが おおく なる 心配も ありました。そこで、おなじ p-k音の 範囲内で いろいろな 音形を つくり、差別化を はかった ことも 考えられます。
コトバは、1音1義が 理想です。しかし、現実には 不可能です。一つ一つの
事物に
それぞれ
ちがった
音形を
設定する
ことは、理論上は
かならずしも
不可能では
ありません。しかし、そのためには
一つの
事物に
かなり
複雑な
音形を
設定する
ことが
必要に
なると
考えられます。ここで、同音異義
などの
現象を「大同の
中の
小異」として見すごすか、それとも「コトバの
流通回路を
みだす
原因」と
見て、外科手術的な
改革を
はかるか、と
いう
問題が
出て
きます。
漢語は もともと 1音節で 1語を つくり、各音節は すべて CVC型。たとえばpiuek福の ように、子音(p)と 子音(k)の 中間に 母音(iue)を はさむ 構造でした。それが
現代漢語では、-n, -ng 以外の 音節語尾 子音が すべて 脱落し、CV(もしくはCVV)型(fu,,baoなど)が 多数派に なって います。このことは、漢語の 音節構造(音形)が 単純化され、その 種類数が すくなく なったと いう ことです。
全体の ナガレ として、音節(音形)の 面では 単純化の 方向を たどって きた ことに なります。このことは、いやおうなしに たくさんの 同音異義語を 生みだす ことに なります。その フツゴウを さける ために、単音節語を
複音節語に
いいかえる
などの方法がとられました。つまり、語彙構造の 面では ぎゃくに 複雑化の 方向に むかう ことに なりました。
日漢の p-k音語は、フタゴの
兄弟か?
さて、ここまで 2回 つづけて、日漢のp-k音語を 比較して きました。これまで
見てきた
ところ
では、日本語・漢語とも
それぞれに
p-k音の 単語家族が 成立して おり、意味・用法の
面
でも、単語家族
まるごと
対応関係に
ある
ように
思われます。数千年まで
さかのぼれば、ヤマトコトバと
漢語は
フタゴの
兄弟だった
のかと
考えられる
ほどです。
とは いっても、日漢の p-k音語 比較は まだ 序の口。そう 簡単に 断定的な ことは いえません。p-k音語 全部は ムリですが、もうすこし 比較作業を つづけて みましょう。
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