[古事記』解釈の キーワード⑭
ソ[且]の甲骨文
ソク[足] の甲骨文
ソウ[走]の銅器名分
ショウ[小] の甲骨文
ソク[束] の甲骨文
シュク[宿] の甲骨文
ヤマトコトバの 音韻感覚の 多様性
「『古事記』解釈の キーワード」の話を して いる うちに、ついつい
漢語音や
英語音の話に
はいりこんで
しまって、自分でも
(?_?)と 思う ことが あります。それでも、やはり
つづける
ことに
します。
それは、『古事記』を 読めば 読む ほど、「ヤマトコトバは 純粋種の 言語」とは 考えられ なく なって きた から です。ぎゃくに、「ヤマトコトバは、もともと
音韻感覚を
異に
する
言語の
チャンポン語
だ」と
考え、漢語や
英語の
音韻感覚と
比較しながら
考える
方が
ヤマトコトバの
基本義を
客観的・合理的に
とらえ
やすいと
思われる
例がつぎつぎ
出てきた
から
です。
もちろん、現代の 日本語音が そのまま 現代の 漢語音や 英語音と 対応関係を もって いると いう わけでは ありません。しかし、日漢英 3言語は もともと「人類の 言語と しての 共通点」を もって いる はずで あり、また 現段階で 具体的な ことは 不明 ながら、それぞれ
古代
から「地球規模での 交流」を とげて いた ことが 推定されて います。
現代日本語は、だれが どう 見ても あきらかに「ヤマトコトバ+漢語+カタカナ語(英語など)」の チャンポン語 です。したがって、日本語の
音韻感覚を
たしかめる
ため
には、ヤマトコトバに
あわせて、漢語や
英語
その他の
言語の
音韻感覚も
たしかめて
おかなければ
ならない
道理
です。しかし、日本では
これまで、その
方面での
研究が
不十分でした。そのため、いま「小学校 から 英語教育」の 問題で あわてて いる よう です。
ほんとうは、もっと はやく ヤマトコトバの 音韻感覚の 多様性に 注目し、「音韻感覚を異に する 言語の チャンポン語」だった
ことを
認める
べき
でした。
そのような 視点 から、前回は まず 日本語の t-k音と s-k音との 関係に ついて 考えてみました。今回は 漢語と 英語の t-k音、s-k音に ついて 考えます。
漢語の t-k 音と s-k音
漢語では、t-k 音と s-k音の 関係が どう なって いる でしょうか? 本格的な 調査は ムリとして、まずは 手あたり しだい t-k 音と s-k音の コトバを いくつか ひろって みました。日本漢字音・上古音・漢字・現代音の 順に ならべて 比較し、音形と 意味との 関係を さぐります。画像の「甲骨文・銅器銘文」(高 明『古文字類編』に
よる)と あわせて ごらん ください。
サク:siok削xiao *小さく サク・ケヅル・ソグ 姿。
⇔サクサク・ザクザク・ザクリ。
tsak作zuo *刀で 素材に 切れ目を 入れる 姿。
ソ:tsiag且qie//
tsag祖zu *モノを 積み重ねる、ツギ ツ
ギ、ツケタス姿。⇔[組・助]。
sag素su *ひとすじ ずつ サカレ[裂]、たれサガル 原糸。サク[索]と 同系。
ソウ:tsug走zou *コシ・ヒザの 関節を 支点と して、ツキダス・スクメル
姿。
sog掃sao *ヨゴレを サク[裂・割]・ソグ[削] 姿。
ソク:tsiuk足zu *ソウtsug走zouと 同系。
siuk束shu *ツカム・スクメル姿。⇔ソク[速]
シュク:siok宿・粛su// *身を スクメル姿。
ショウ:siog小・咲・笑xiao *クチビル・ハナビラが
サケル[裂] 姿。ソグ[削] 姿。
thiog少shao *小さく、サク[裂・割]・ソグ[削]・ケヅル[削] 姿。
ざっと ごらんの とおり ですが、たった これだけの 資料 から でも、いくつかの ことが 見えて きます。
①
上古漢語音と 現代漢語音…上古漢語音では
t-k音やs-k音の 音形 として 成立して いたが、現代漢語音では 語尾子音(-k, -g)が すべて 脱落し、CVC型 から CV型の開口音に 変化した。
②
上古漢語音と 日本漢字音…上古漢語のs-k音は、当然の こと ながら 日本漢字音 でもs-k音として 表記されて いる(サク[削]・ソ[素]・ソウ[掃] など)。さらに、もとt-k音グループに 分類すべきかと 思われる ts-k音漢語に ついても、日本漢字音で s-k音として 表記されて いる (サク[作]・ソ[且・祖]・ソウ[走]など)。この 現象は、さきに 指摘した「ツク から スクへ」と 一連の もの かも しれない。
③
日漢 s-k音語の 対応関係…日本語では、サクを 漢字で[裂・割・咲]などと
書き分ける
ことが
あるが、ヤマトコトバとしては
もともと
1語で ある。サク=小サク サキ分ける 姿。この サクは、シク・スク・セク・ソク などと ともに、s-k音の 単語家族を 形成して いる。漢語でも、ショウsiog小の まわりに サク[削]・ショウ[少・肖・消] などの s-k音単語家族を 形成して いる。ソクsiuk束(ツカ。ツカネル)と
ソク[速]、ソクsiuk足と ソク[促・捉]、ソtsiag且と ソ[祖・鉏・鋤] などに ついても、ほぼ おなじ 関係が 見られる。
以上の こと から、古代の 日本語と 漢語の s-k音は、フタゴの 兄弟 ほどの 対応関係をもって
いた
ことが
推定されます。
英語のt-k音とs-k音
t-k音英語の 基本義を さぐる には、つぎの「語根と派生語」の 関係が 参考に なると 思います(A.H.D.フロクに よる)。
Deik-(to show示す, produce造り出す) teach教える, dictate書き取らせる, condition状態, judge裁判官, disk円盤. *ツキデル・ツキダス姿。
Dek- (to takeつかむ, accept受け取る) doctor博士, document記録, dogma教義, paradox逆説, decorate飾りツケル, dignity気高さ. *「手が 來る」姿。ツカム・ツケル・トク[解・説]姿。
Deuk-(to lead導く) tug強く引く, tow1引く, tie縛りツケル, teamチーム, dock1船だまり, duct導管, duke公爵, conduct指導する, introduce紹介する, produceツクリ出す, educate教育する. *タグリよせる、引きツケル、デ[出]てコ[來]させる姿。
Dhigw-(to stickツキサス, fix) dike1堤, ditch溝, dig地面を掘る, fixスエツケル, prefix接頭辞. *ツク・ツケル・ツキサス姿。
Tag- (to touchさわる, handle取っ手 ) tact手ざわり, tangent接線, taste味覚, tax税金, attainヤリトゲル,contact接触, entire全くの. *テ[手]がクル[來]、タグル[手繰]、トゲル[遂]、ツクス[尽]姿。
Teks- (to weave織る) text本文, tissue組織, context文脈, technical技術上の, technology科学技術. ⇔タク[長・闌]・タカム[高]・タクム[手組・工・巧]・タクミ[工・巧]。
s-k音英語については、つぎの「語根と派生語」例が参考にしましょう。
Sag- (to seek out探し出す) seek, sake1理由, sagacious利口な, hegemony主導権. *サク・サキワケル 姿。 ⇔サガス・サカイ(サカヒ。理由・原因)。
Sak- (to sanctify清める) sacredささげられた, saint聖人, sanctify. *サク[裂・割]姿。
Segh- (to holdつかむ) scheme計画, scholar学者, school1学校. *時間をサク[割] 姿。
Sek- (to cut割く) scythe長柄の草刈りがま, saw1のこぎり, skin皮膚, section区域, segment区切り, insect昆虫, intersect横断する, sickle草刈りがま. *サキ[裂・割]分ける 姿。
Sekw-1 (to followつづく) sect宗派, sequence連続, second2第2の, seal1印章, signしるし, social社会的な, society社会, associate加盟する. *スキな もの 同士で ツキアウ姿。
Skei- (to cut切る, split裂く) science科学, conscious気づいている, shitくそ, skiスキー.
*モノゴトをトキ[解・溶]ほぐす、ツキツケル、ツキハナス 姿。
Skel-1 (to cut切る) shell貝がら, shale1頁岩, scalp頭皮, shield盾, skill技量, shelf棚, half半分, sculpture彫刻. *貝の カラと 身などを サキ[裂・割]分ける 姿。
Sker-1 (to cut切る) shear刈りとる, share1分け前, score刻み目, short短い, shirtシャツ, skirtスカート, screenスクリーン, carnationカーネーション, carnival謝肉祭, sharp鋭い, scrap1切れ端, scrapeこすりとる, screwねじ. *サキ[裂・割]、キル[切] 姿。
Sker-2 (to turn曲がる, bend曲げる) shrinkすくむ, curve曲線, crestとさか, crepeはう, circle円形, search探す, crown王冠. クビ・カタ・コシ・ヒザなどの 関節を 始点と して 身体各部を マゲル・マワス 姿。また、(手の はたらきを タスケル ため)ツキ棒を 振りまわす・振りサクル 姿か。Circleは 円形で あり、searchは サグル こと。ツキサクリ、サガシ出す
こと。
Scribh- (to cut割く, separate分ける, siftふるい分ける) scribe筆記者, script手書き, Scripture聖書, circumscribe取り巻く, transcribe(口述などを)筆記する. *紙面を サキ[割]分け、モジ記号を
しるす
姿。
これから さきの 展望
ここまで、「ツキ棒から スキ[鋤]へ」、「t-k音からs-k音へ」という テーマで、日漢英の t-k音と s-k音に ついて 考えて きました。
はじめは「おもしろそう だから」と かるく 考えて いた のですが、いざ 具体的に3言語の 語彙資料を 採集して みると、それぞれ
大量の
語彙数に
なる
ことが
分かり、今回は
ほんの「試掘」ていどの
ものに
とどめ、本格的な「採掘・分析」の 作業は 後日にまわす ことに しました。
今回 提供できた ていどの 断片的な 語彙資料 だけで 日漢英の t-k音・s-k音の 関係について 議論したり、結論を 出したり する ことの 危険性は 分かって いる つもりです。同時に また、いま この 段階で これだけの 語彙資料が 出そろった という こと から、このさき「日漢英3言語の 音韻対応関係」に かんする「必要、かつ
十分な」資料が
入手できる
かも
しれない
という 展望も 開けて きました。
いつも 思う こと ですが、日本語と 外国語との 音韻対応関係を さぐる 作業は、「コトバの 化石 さがし」みたいな 作業です。平生 何気なしに 使っている、ありふれた コトバでも、あらためて 分析・比較して みると、意外に 貴重な 情報が こめられて いたりします。おおきな 期待を こめて、このさきも コトバの 化石採集を つづけたいと 思います。
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