2015年3月7日土曜日

k-r音の コトバ


『古事記』解釈の キーワード⑮



クラの いろいろ
日本海文化悠学会の 2 研修会で 関谷克己 さんが アシクラジ[芦峅寺] などの クラ[]という 漢字の 用法に ついて報告 されました。日本語の クラに 当たる 漢字は クラ[藏・庫・倉・鞍・座] などの ほか、クラ[谷・暗・競] などが あります。

漢字は、もともと 漢語(中国語) 表わす ために つくられた モジ であり、日本語(ヤマトコトバ) ために つくられた モジ では ありません。漢字の 造字造は 象形・指事・会意・形声・轉注・仮借 などに 分かれ ますが、基本的に 表意モジ です。モジを もたなかった 日本人は、漢字の 表意性を 利用して 日本語を 表記する ことを 思いつきました。その結果 として、漢字 アン[]・コ[] ・ザ[]・ソウ[]・ゾウ[] などを クラ 読む ことに なりました。もとの 漢字音 とは まったく 関係 なく、日本語の 音韻感覚に あわせて 漢字を 読む、いわゆる 訓読み 方法 です。

日本語の クラは、語根 kur-(クル、エグル姿) 派生語で、2音節 動詞 クル[刳・來・繰・暮]の 名詞形 解釈する ことが できます。山腹や 岩盤を クル・エグル 姿が 基本で、そこに 生まれる アナ(空間) クラ[藏・庫・倉・座]です。神さまや 貴人の 座席、また 食料 など 貴重品の 貯蔵倉庫 とも なります。クラ[鞍]は、クラ[座]の 同類。クラ[谷]は、岩盤を クリぬかれた 姿。クラ(アナグラ・イワクラ)の 中は クラ[暗]く、やがて クロ[黒] イメージ です。

その点 では、クラの 基本義を クル[暮]姿 考える ことも できます。しかし、もういちど 考えて みると、クル[暮]も「日が 西の 大地を クル[刳]」姿 だと 分かってきます。

クラ[藏・庫・倉・鞍・座] 並ぶ 姿、もしくは クラの 中に 人や 物が 並ぶ 姿は、やがて クラブ[比・較・競]・クラベル 姿 です。

アシクラジ[芦峅寺]・イワクラジ[岩峅寺]などの クラ[]は、日本製の 漢字、いわゆる 国字 です。「立山信仰の 聖地」を 強調する ために つくられた 国字と されて いますが、ヤマトコトバ としては、もともと クラ[藏・庫・倉・座] おなじ1 考えて よい でしょう。

 

『古事記』の中のk-r音語
『古事記』の 中でも k-r音の コトバが かなり 多数 出て きます。そのうちkur-音語 だけ でもつぎのように なります。

クラ[鞍・倉・闇・谷]…クル もの。動詞 クルの 名詞形。クラ[座・倉・庫]は、まわりを 囲まれて いる 点で、ハコ・イレモノの 姿 でも ある。→アメノクラドノカミ[天之闇戸神](渓谷を 掌る )・クラ [座・闇]タニ[]。⇔窟窿kulong洞穴。Crateわく箱, crater噴火口.

クラゲ[久羅下]…クラ[座・倉] 姿を もつ 海産・水産動物。

クラフ[]…クル>クラ>クラフ。

クラブ[]…クル>クラ>クラブ。クラ[座・庫] 同類が 並ぶ 姿は、やがて クラベル 姿。club.

クラヰ[]…クラ[]+ヰ[]。⇔class, grade.

クリ[]…動詞クル[] 連用形 からの 名詞用法。⇔クリ[庫裏](寺の 台所)

クル[來・刳・繰・絡]…クル・エグル・タグル姿。 →クルヒ[來日・明日]

クルシム[]…キリ・ハリ・ヤジリ などが 肉体に シミこんで クル[來・刳] 姿。

クルホス[]…クルフ[] 他動詞。⇔craze気を 狂わせる.

クレ[]…クル[]・クレ[]との 関連も 考え られる。日本 から 見て「日が クレル[](没)」ところ。→クレハトリ[呉服]・クレハラ[呉原]・クレビト[呉人]

クロ[]…クラ[暗・闇・谷] 語尾母音 交替か。谷間の クラ[] クラ[]く、クロ[]色。

 

kar-音の コトバ
ついでに、『古事記』の 中の kar-音の コトバも ひろって みます。

カラ[韓漢唐]…カラは もともと 朝鮮南部の 伽羅国を いうが、やがて 朝鮮半島 全体、さらには 唐の 国、外国一般を さして いう ように なったと 解されて いる。→カラカヌチ[韓鍛]・カラクニ[韓国]・カラヒト[韓人]。⇔クレ[]

カラ[柄・幹・因而]…カル[刈・狩・借]ものが カラ[殻・幹]。その カラを カル ことで 貝の 身は 安泰。植物は その カラ[] カラ 枝葉を のばす。→カラダ[]。⇔カレ[故・爾]

カリ[刈・猟・仮・雁]

カル[刈・猟・枯・軽]…「囲んで カル・キル」姿。水分補給 ルートを キル(cut〕と、カレル[]。それだけ カル[] なる。

カレ[故・爾]…故に。だから。カラ[因而] 語尾母音交替。

 

k-r音の 系譜
ヤマトコトバ では、k-r 2音節動詞 カル・キル・クル・ケリ・コルが すべて 成立して います。とりわけ カル[]・キル[]・コル[]は、いずれも 木・草・毛 などを キル[]姿 であり、クル[] クリコム・キリコム姿。クル[]も、「向こう から 空間を キリこんで 來る」姿 です。

カラに しても、カラ[] カラ[]・カラ[]・カラ[因而] では、一見 なんの 関係もなさそうに 見えながら、実は k-r グループと して、きっちり 整列して いる ことがわかって きました。クラ[] クラ[]・クラ[]・クラ[]との 関係も そう です。

それと もう一つの 発見が ありました。それは、同一の 事物に ついても、視点の チガイに よって、まったく 別の 音形 として 表現される という こと です。たとえば 漢字 カン[]は、ヤマトコトバで ミキ とも カラ とも 読みます。つまり、まったく 無関係の 別語と いう ことに なります。また、漢字 クウ[] にも、カラと ソラ、二つの ヨミが あります。ミキは m-k音、カラはk-r音、ソラは s-r音の コトバ。数千年の むかし から、それぞれ 別々の 単語家族の 中で そだって きた コトバ です。

ヤマトコトバは 日本列島に 住む 人たちの コトバ ですが、その 日本人は もともと 海外 からの 渡来人 です。世界各地 から、それぞれの 民族言語を もちよった 人たちが 共通語 として ヤマトコトバを そだて あげた のです。

この 歴史事実と ヤマトコトバの 実態を てらし あわせて ゆけば、m-k音、k-r音、s-r など 単語家族の 歴史事実が よりくわしく わかって くる はず です。

さらに いえば、ヤマトコトバと 漢語・英語 などの 単語家族を 比較する ことで、やがて ヤマトコトバの ルーツを さぐる 手がかりが つかめる かも しれません。

 

漢語・英語k-r音との比較
ここまで、ヤマトコトバの k-r音に ついて 考えて きました。大ブロシキを ひろげた だけで、客観的・合理的な 説明が 不足 だったと 反省して います。これが いまの わたしの 実力 です。おゆるし ください。
漢語や 英語のk-r との 比較も 予定して いましたが、今回は 間に あいません。次回に まわさせて いただきます。

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