2015年1月18日日曜日

スキ・スク・スクネ


『古事記』解釈の キーワード⑫

 
 
 

 
 
 

 
画像に ついて
サク・スク・スキ など s-k音の 話を する ので、またしても 梅本 公美子 さんの 作品を 借用させて いただきました。S-k音の 音形と 意味との 関係を 考える うえで、なにか 参考に なればと 願って います。
 
仲哀天皇と 神功皇后
前回は 年頭の ごあいさつ がわりに「日本語の 系統」、「音韻対応の 法則」などの 問題に ふれて みました。今回 から また 実務的な 作業に もどります ので、よろしく お願いします。
「古事記を 読む 会」1月研修会 では、「中巻、仲哀天皇」の くだりを 輪読する 予定になって います。仲哀天皇と いっても、あまり ピンと こない かも しれませんが、いわゆる「三韓征伐」で 有名な 神功皇后 ダンナ さんと いえば、わかったと いわれる かも しれません。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 
神功皇后と 建内スクネ
仲哀天皇は おとなしい タイプで、国土開発や 海外情勢 などに あまり 関心を もたなかった ようです。くらべて、神功皇后は きわめて 精力的な 活動家 タイプ でした。
妊娠中の 体で 朝鮮半島 わたり、「シラギ[新羅] ミマカヒ[御馬甘] 定め、クダラ[百済] ワタリ[] ミヤケ[屯家] 定め…、ミツエ[御杖] シラギ国王の 門につき立て、スミノエ三神の アラミタマ[荒御魂] その国を 守る 神として 祭り 鎮めて 帰国した、などと 記録されて います。
神功皇后の 活動を ささえた 人物が タケウチノスクネ[建内宿禰]。景行・成務・仲哀・応神・仁徳、5代の 天皇に つかえたと されて います。
仲哀天皇の 名は タラシナカツヒコ[中日子]。神功皇后の 名は オキナガタラシヒメ[息長比売]。ともに タラシ いう ナノリを もって います。そして(『古事記』には 記録が 見あたり ませんが)神功皇后の オキナガスクネ[息長宿禰]王と されて います。
タケウチノスクネ[建内宿禰] いえば、廃仏派の 物部氏と あらそった ソガ[蘇我]氏の 祖先とされる 存在。この流れと 並行して、仲哀・神功の 孫に あたる 仁徳天皇 名が オホサザキ[大雀]いいかえれば、おおきな ミササキ[御陵] つくった 天皇。さらには、仁徳天皇の 允恭天皇の 名が ヲアサヅマワクゴノスクネ[男浅津間若子宿禰]。その 皇后が オサカノオホナカツヒメ[忍坂之大中津比売] なって います。
 
s-k音の ナノリ
ここで、スクネ・ソガ・サザキ・オサカ などの s-k 歴代天皇系図 見られる ことに 注目し、その 意味を 考えて みたいと 思います。『古事記』(小学館版)の「神代・歴代天皇系図」 中から、s-k音の ナノリを もつ 神名 および 天皇・皇后名 などを えらんで 列記して みます。
神代系図では、1例 のみ…コノハナサクヤヒメ[木花佐久夜毘売]
歴代天皇系図では;
初代 神武天皇の 皇后…イスケヨリヒメ[須気余理比]
3代 安康天皇…シキツヒコタマデミ[師木津日子玉手見]
4代 懿徳天皇…オホヤマトヒコスキトモ[大倭日子]
6代 孝安天皇の 皇后…オシカヒメ[忍鹿比売]
8代 孝元天皇の 皇后…ウツシコ[色許]。その 子、スクナヒコタケヰゴコロ[少名日子建猪心](別に、タケウチノスクネ[建内宿禰])
9代 開化天皇の 皇后…イカガシコ[伊迦賀色許]
12 景行天皇の 皇后…ヤサカノイリヒメ[之入日売]
14 仲哀天皇の 皇后(神功) 父…オキナガノスクネノミコ[息長宿禰]
16 仁徳天皇…オホサザキ[]。その 子、オホクサカノミコ[日下]、ワカクサカベノミコ[日下部王]
19 允恭天皇…ヲアサヅマワクゴノスクネ[男浅津間若子宿禰]。その 皇后、オサカノオホナカツヒメ[忍坂之大中津比売]。その 子、サカヒノクロヒコノミコ[之黒日子王]
25 武烈天皇…ヲハツセワカサザキ[小長谷若]
30 敏達天皇…ヌナクラフトタマシキ[沼名倉太玉]。その 子、オサカノヒトヒコノミコ[日子人太子]
32 崇峻天皇…ハツセベノワカサザキ[長谷部若]
 
サク・シク・スク・ソクの系譜
神名・人名・地名 など には、かならず さまざまな 情報 こめられて いる はず です。こんど とりあげた s-k音の 神名・人名に ついても、それぞれの 環境の もと、必要に 応じて、s-k音の ナノリ えらばれたと 考えられます。
ヤマトコトバ では、サク・シク・スク・セク・ソク などの 2音節動詞 成立して おり、その まわりに たくさんの 品詞語が 組織されて います。天皇名 などの 中の s-k音に ついても、基本的には まず こうした 視点 から 分析して みる ことが 必要です。
たとえば 仲哀と 神功とは ふたりとも タラシ ナノリを もって いる ので、表面上はただの タラシ連合 です。しかし、神功の 父が オキナガノスクネノミコ[息長宿禰] だっと いう ことに なると、実態は「タラシと スクネの 連合」と いう ことに なります。
スクネ 語源に ついては 諸説 ある よう ですが、スクナの 交替音 考えれば、神代の スクナビコナ() 孝元天皇の 子、スクナビコタケヰゴコロ、(ならびに)タケウチノスクネ との 関係も すっきり 整理できると 思います。
 
カナスキ[金鉏] スク[] 姿
現代人にも わかりやすい ナノリの 一つが 懿徳天皇の 名、オホヤマトヒコスキトモ。ずばり、カナスキ[金鉏] 先進技術を うたいあげた ナノリ です。
『古事記』は 大和政権の 正統性を うったえる ために 書かれた 文書 ですが、その 基本戦略が「イネ農耕に よる 日本列島 改造」、具体的に いえば「ツキ(突棒) から スキ[]へ」と いう こと でした。
 
ツク から スク への 変化
ヤマトコトバの サク・シク・スク などの 音形と 意味の 関係を さぐって いると、これら s-k もともと タク・チク・ツク などの t-k 同源で、その後 分離・独立したもの では ないかと 考える ように なりました。このことに ついて、できれば 次号 ご報告したいと 思って います。
 
ご参考 までに
なお、「s-k音が 表わす 基本義」や「日漢英の s-k音語 比較」 などに ついて、これまで この ブログで しばしば とりあげて きました ので、あわせて ご参照 いただければ シアワセです。とりわけ 最近のもの では、「w-k音、s-k音の基本義」(2014.11.22)など。

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