2014年10月11日土曜日

日本語の s-r音


『古事記』解釈の キーワード⑤
 
 
サラニ[]=サラ[]+ニ[]




ソラ[]=ソル[反・逸]もの
 
 
 
画像に ついて
「サラニ[]と「ソラ[]」の 音韻感覚を 説明する 資料と して、ネットで 見つけた 画像を 借用させて いただきました。
 
あらためて s-r 日本語を 考える
前回は、シル[知・汁]・シロ[白・城]・シラギ[精・新羅]・シラグ[]などの  s-r音語に ついて 考えて みました。しかし、s-r音日本語と いう ことに なると、sir-音語 だけ とりあげて 終わりと いう わけにも ゆきません。sar-, sur-, ser-, sor-音を ふくめ、あらためて s-r音日本語の 意味・用法に ついて 考えて みる ことに します。
 
s-r音の 擬声・擬態語
まずは s-r音の 擬声・擬態語を ひろって みます。サラサラ から ソロリ・ゾロリ までゾロゾロ 出て きます
サラサラ・ザラザラ・サラリ・ザラリ・ザラリ・ジリジリ・ジロジロ・ジロリ・スラスラ・ズラズラ・スラリ・ズラリ・スルスル・ズルズル・スルリ・ズルリ・スレスレ・ゾリゾリ・ソロソロ・ゾロゾロ・ソロリ・ゾロリ。
これらの 擬声・擬態語と 品詞語との 関係を 考えて みましょう。
名詞 サラ[]は、サラリと した 空間。だから こそ、この サラ[] サラニ[] 食品を盛りつける ことが できます。食べのこし分を サラリと とりサル[]と、サラ[] サラ[] もどります。
スルスル・ズルズル などは、動詞スル[]・ズル[] つながる コトバです。
ソロソロ・ゾロゾロは、「ヒゲを ソル[] 姿」や「ソリのこされた ヒゲが ソロッテ ならぶ 姿」でしょうか。また、英語のslow, slowly 連想させる 語音でも あります。
 
『古事記』の中の s-r音語
[sar-] サラニ[]・サラフ[]・サル[去・猿]・サルタビコ[猿田毘古]・サルメノキミ[猿女君]
[sir-] シル[知・治]・シラカタノツ[白肩津]・シラカノミコト[白髪命]・シラカベ[白髪部]・シラカミノヒツギノミコ[白髪太子]・シラキ[新羅]・シラギ[新羅]・シラシム[令知]・シラス[]・シラタマ[白玉]・シラトリ[白鳥]ノミサザキ[御陵]・シラニギテ[白和幣]・シラヌ[不知]・シラヒコノミコ[白日子王]・シラヒワケ[白日別]・シラブ[調]・シラミ[]・シラヰ[白猪]・シリ[尻・後]・シリクメナハ[尻久米縄]・シリゾク[退]]・シリツト[後戸]・シリヘ[後方]・シリヘデ[後手]・シル[]・シルシ[印・験・応]・シルス[]・シロ[白・代・城]・シロウサギ[素兎]・シロカネ[]・シロカネノキミ[銀王]・シロキ[]・シロシメス[令治・所知]・シロタダムキ[白腕]・シロタヘ[白妙・白栲]・シロビコノミコ[白日子王].
[sur-] スリ[]・スル[為・摺]
[ser-] セル[](させる)。
[sor-] ソラ[]・ソラツヒダカ[虚空津日高]・ソラツヒメノミコト[虚空津比賣命]・ソラミツ[蘇良美津]・ソリタタス[蘇理多多須]・ソル[]・ソレ[其・彼].
 
s-r 日本語の 音韻構造
s-は、舌の サキを 上ハグキに スリつけて 発声する マサツ音スル・コスル 姿を 表わします。ハレツ音 t- くらべて、やわらかい 感覚を もたらします。
r-は、舌の サキで 上ハグキを ハジク ように して 発声する 音。ヤマトコトバでは 語頭に 立つ ことが ありません。ぎゃくに 語中・語尾には 多用されて います。どちらかといえば、n- ちかい 語音です。イナ[稲荷]→イナ-
s-r 日本語(ヤマトコトバ) どんな コトバが あるか、また どんな 基本義が あるか、考えて みましょう。結論を さきに いえば、ヤマトコトバの 組織原則 から みて、s-r音日本語には 2音節 動詞 サル[去・曝]・シル[知・痴]・スル[摩・擦]・セル[迫・競]・ソル[反・逸・剃] 成立して いて、その まわりに 名詞 その他の 品詞語が 組織されて いると 考えて よい でしょう。
では、具多的に 見て みます。
[sar-] サル[去・晒・曝]…サラ[皿・新]・サラス[晒・曝]・サラニ[]・サラフ[]・サル[]・ザル[]サラス[晒・曝]は、食品・衣料などに 日光や 水流を そそぎ、ヨゴレや 色をサラス[] こと。サル[]は、顔の 部分 だけ サラス[晒・曝](脱毛・脱色) 姿か。もしくは、サ[]=ヤ[]で、手足を「矢の ように イダス[射出]」姿か。ザル[]は、編目 から水分が 流れ サル[] 構造の カゴ。
[sir-]シル[]…シラ[白・不知]・シラニ①[白土]・シラニ②[白粉]・シラニ③[白煮]・シラニ④[不知]。*sir-音語に ついては、前回の ブログを ご参照 ください。 
[sur-]スル[摩・擦・剃・刷・掏・為]…スラ (でさえ)・スリ[擦・刷・掏]・スレ[摩・擦]・ズル(ズレル)。スラは、動詞スルの 未然形 名詞形。「ちょっと スレあった だけ なのに」の 意。サヘ(サエ) ちかい。ズル(ズレル)は、位置や 時間が スレチガウ・ソレル姿。
[ser-]セル[[迫・競]]…セリ[競・芹]「セ[背・瀬]+ル」の 構造。「セ[背・瀬] 姿に ナル=セマル・セリアウ」の 意。
[sor-]ソル[反・逸・剃]…ソラ[空・其]・ソラミツ[空御津・空見]・ソリ[剃・反]・ソレ[反・逸・剃・其・彼]・ソロフ[]ヒゲを ソル[] とは、本体の カオ から ソリ[] カエラセ、ソリ 落とす(ソラス[反・逸])姿。ソレ[其・彼]は、コレ(本体) から ソレタ[反・逸]・ソリ[] とられた 存在。ソラミツに ついては、「空に 満つ。空に 見つ」などと 解釈する 説が おおい よう ですが、イズミは [空御津](ソラを とびかける もの=ヤ[]=太陽=不死鳥) 解釈して います。ツ[]は、船が ツク[着・附]・デル[] ところ なので、ミナト[] 意味で つかわれますが、漢字[] もともと 当て字 です。ツカ[] (ツキ立つ もの)・ツナ[](ツキ出る ナリモノ)・ツハモノ[](ツキ出る ハモノ)などの ツ。枕詞 ミツミツシが 「勇武な さま」の 意で 久米に かかると いう のも、久米の子らが「ツク[]・タツ[断・絶] 姿の 武器を もって いた からと 考えられます。
 
次回は、s-r音の 漢語
ここまで s-m音の 日本語に ついて 考えて きましたが、シラグ・シロ・シロガネの 語音からはsilk, silverなど、ソラ[] ついては Sol (ローマの太陽神。太陽) solar(太陽の)などが 連想されます。
しかし、その まえに まず 漢語の s-r チェックして おきたいと 思います。いまの ところ、[砂・沙]・サイ[西・晒・細]・シ[死・私]などの 上古音が s-r だった ことが 分かって います。

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