『古事記』解釈の
キーワード⑤
ソラ[空]=ソル[反・逸]もの
画像に
ついて
「サラニ[更]と「ソラ[空]」の 音韻感覚を 説明する 資料と して、ネットで 見つけた 画像を 借用させて いただきました。
あらためて
s-r音 日本語を 考える
前回は、シル[知・汁]・シロ[白・城]・シラギ[精・新羅]・シラグ[精]などの s-r音語に ついて 考えて みました。しかし、s-r音日本語と いう ことに なると、sir-音語 だけ とりあげて 終わりと いう わけにも ゆきません。sar-, sur-, ser-, sor-音を ふくめ、あらためて s-r音日本語の 意味・用法に ついて 考えて みる ことに します。
s-r音の 擬声・擬態語
まずは s-r音の 擬声・擬態語を ひろって みます。サラサラ から ソロリ・ゾロリ までゾロゾロ 出て きます。
サラサラ・ザラザラ・サラリ・ザラリ・ザラリ・ジリジリ・ジロジロ・ジロリ・スラスラ・ズラズラ・スラリ・ズラリ・スルスル・ズルズル・スルリ・ズルリ・スレスレ・ゾリゾリ・ソロソロ・ゾロゾロ・ソロリ・ゾロリ。
これらの 擬声・擬態語と 品詞語との 関係を 考えて みましょう。
名詞 サラ[皿]は、サラリと した 空間。だから こそ、この サラ[皿]に サラニ[更] 食品を盛りつける
ことが
できます。食べのこし分を
サラリと
とりサル[去]と、サラ[新]の サラ[皿]に もどります。
スルスル・ズルズル
などは、動詞スル[擦]・ズル[摺]に つながる コトバです。
ソロソロ・ゾロゾロは、「ヒゲを
ソル[剃] 姿」や「ソリのこされた
ヒゲが
ソロッテ
ならぶ
姿」でしょうか。また、英語のslow, slowlyを 連想させる 語音でも あります。
『古事記』の中の
s-r音語
[sar-] サラニ[更]・サラフ[去]・サル[去・猿]・サルタビコ[猿田毘古]・サルメノキミ[猿女君]・
[sir-] シル[知・治]・シラカタノツ[白肩津]・シラカノミコト[白髪命]・シラカベ[白髪部]・シラカミノヒツギノミコ[白髪太子]・シラキ[新羅]・シラギ[新羅]・シラシム[令知]・シラス[知]・シラタマ[白玉]・シラトリ[白鳥]ノミサザキ[御陵]・シラニギテ[白和幣]・シラヌ[不知]・シラヒコノミコ[白日子王]・シラヒワケ[白日別]・シラブ[調]・シラミ[虱]・シラヰ[白猪]・シリ[尻・後]・シリクメナハ[尻久米縄]・シリゾク[退]]・シリツト[後戸]・シリヘ[後方]・シリヘデ[後手]・シル[知]・シルシ[印・験・応]・シルス[記]・シロ[白・代・城]・シロウサギ[素兎]・シロカネ[銀]・シロカネノキミ[銀王]・シロキ[白]・シロシメス[令治・所知]・シロタダムキ[白腕]・シロタヘ[白妙・白栲]・シロビコノミコ[白日子王]。.
[sur-] スリ[摺]・スル[為・摺]。
[ser-] セル[為](させる)。
[sor-] ソラ[虚]・ソラツヒダカ[虚空津日高]・ソラツヒメノミコト[虚空津比賣命]・ソラミツ[蘇良美津]・ソリタタス[蘇理多多須]・ソル[剃]・ソレ[其・彼]。.
s-r音 日本語の 音韻構造
s-は、舌の サキを 上ハグキに スリつけて 発声する マサツ音。スル・コスル 姿を 表わします。ハレツ音 t-に くらべて、やわらかい 感覚を もたらします。
r-は、舌の サキで 上ハグキを ハジク
ように
して
発声する
音。ヤマトコトバでは
語頭に
立つ
ことが
ありません。ぎゃくに
語中・語尾には
多用されて
います。どちらかといえば、n-音に ちかい 語音です。*イナニ[稲荷]→イナリ。-
s-r音 日本語(ヤマトコトバ)に どんな コトバが あるか、また どんな 基本義が あるか、考えて みましょう。結論を
さきに
いえば、ヤマトコトバの 組織原則 から みて、s-r音日本語には 2音節 動詞 サル[去・曝]・シル[知・痴]・スル[摩・擦]・セル[迫・競]・ソル[反・逸・剃]が 成立して いて、その まわりに 名詞 その他の 品詞語が 組織されて いると 考えて よい でしょう。
では、具多的に 見て みます。
[sar-] サル[去・晒・曝]…サラ[皿・新]・サラス[晒・曝]・サラニ[更]・サラフ[浚]・サル[猿]・ザル[笊]。*サラス[晒・曝]は、食品・衣料などに 日光や 水流を そそぎ、ヨゴレや 色をサラス[去] こと。サル[猿]は、顔の 部分 だけ サラス[晒・曝](脱毛・脱色) 姿か。もしくは、サ[箭]=ヤ[矢]で、手足を「矢の
ように
イダス[射出]」姿か。ザル[笊]は、編目 から水分が 流れ サル[去] 構造の カゴ。
[sir-]シル[知]…シラ[白・不知]・シラニ①[白土]・シラニ②[白粉]・シラニ③[白煮]・シラニ④[不知]。*sir-音語に ついては、前回の
ブログを
ご参照
ください。
[sur-]スル[摩・擦・剃・刷・掏・為]…スラ (でさえ)・スリ[擦・刷・掏]・スレ[摩・擦]・ズル(ズレル)。*スラは、動詞スルの
未然形
兼
名詞形。「ちょっと
スレあった
だけ
なのに」の
意。サヘ(サエ)に ちかい。ズル(ズレル)は、位置や 時間が スレチガウ・ソレル姿。
[ser-]セル[[迫・競]]…セリ[競・芹]。*「セ[背・瀬]+ル」の 構造。「セ[背・瀬]の 姿に ナル=セマル・セリアウ」の 意。
[sor-]ソル[反・逸・剃]…ソラ[空・其]・ソラミツ[空御津・空見]・ソリ[剃・反]・ソレ[反・逸・剃・其・彼]・ソロフ[揃]。*ヒゲを ソル[剃] とは、本体の カオ から ソリ[反] カエラセ、ソリ 落とす(ソラス[反・逸])姿。ソレ[其・彼]は、コレ(本体) から ソレタ[反・逸]・ソリ[剃] とられた 存在。ソラミツに ついては、「空に 満つ。空に 見つ」などと 解釈する 説が おおい よう ですが、イズミは
[空御津](ソラを とびかける もの=ヤ[矢]=太陽=不死鳥)と 解釈して います。ツ[津]は、船が ツク[着・附]・デル[出] ところ なので、ミナト[港]の 意味で つかわれますが、漢字[津]は もともと 当て字 です。ツカ[塚] (ツキ立つ もの)・ツナ[綱](ツキ出る ナリモノ)・ツハモノ[兵](ツキ出る ハモノ)などの ツ。枕詞 ミツミツシが 「勇武な さま」の 意で 久米に かかると いう のも、久米の子らが「ツク[突]・タツ[断・絶] 姿の 武器を もって いた からと 考えられます。
次回は、s-r音の 漢語
ここまで s-m音の 日本語に ついて 考えて きましたが、シラグ・シロ・シロガネの 語音からはsilk, silverなど、ソラ[空]に ついては Sol (ローマの太陽神。太陽)や solar(太陽の)などが 連想されます。
しかし、その まえに まず 漢語の s-r音を チェックして おきたいと 思います。いまの ところ、サ[砂・沙]・サイ[西・晒・細]・シ[死・私]などの 上古音が s-r音 だった ことが 分かって います。
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