「カード64」(t-n)
t-n音語は、少数派
前回で、いちおう 日漢英のk-n音 比較作業を おわりました ので、このあと t-n音を とりあげる ことに します。まず 今回は 日本語の t-n音を とりあげます。
ざっと 見た ところ、日本語の t-n音語は 少数派の よう です。擬声・擬態語や
2音節動詞・名詞などの語
彙数の
すくない
ことが
特色です。
t-n音の 語彙数が すくない という こと は、t-n音語の 基本義を さぐる うえで 有利・不利 どちらで しょうか?チェックすべき 語数が すくない だけ 手数が はぶける だろうとも 考えられます。ぎゃくに、わずかな
語数の
t-n音語 から 共通基本義を 抽出したばあい、その 客観性・合理性に 自信が もてるか という 心配も あります。
いずれに しても、ヤマトコトバ 一般の 組織原則に したがい、また 漢語・英語の
t-n音語の 実態をも 参考に しながら、作業を
すすめたいと
思います。
t-n音の擬声・擬態語
擬声語・擬態語の 定義が むずかしく、また 擬声語は、そのまま
擬態語としても
用いられるのが
普通の
よう
ですが、いちおう
現行の
擬声・擬態語を
ざっと
ひろって
みました。
擬声語…ダ‐ン・チーン・チャンチャン・チュン・チョンチョン・ツンテンシャン・トン・
ドン・ドンチャン・トンチンカン・ドンツク。
擬態語…チャン・チンマリ・ツーン・ツン・デーン・デン・ドンピシャリ・ドンヨリ。
ごらんの
とおり、おしまいに「ン」が つく コトバ ばかり
です。ヤマトコトバ(上代語)にも
ナ行音の
音節(ナ・ニ・
ヌ・ネ・ノ)は
ありましたが、「ン」という 音節は あり
ません
でした。つまり、ここに
ご紹介した
擬声・擬態語は、平安時代
以後に
成立した コトバかと
思われます。
この「ン」音節が
うまれた
原因や
経過は
よく
分かり
ませ
んが、日本語の
音韻変化(撥音便)に よる ものと、外来語(漢
語など) うけいれに よる ものと、2とおり ある よう です。
撥音便:ヨミ[読]テ→ヨンデ。 トビテ[飛]→トンデ。 ツキサク[劈]→ツンザク。
漢字音:タンtan旦dan// デンden田tien// トンduen屯tun//
ヤマトコトバでは、基本的に すべての 音節語尾が 母音で
す。ところが 漢語では、基本的に
すべての
音節がCVC型、
つまり 子音終わりの 構造に なって います。[tan旦dan]
を
タヌ、[duen屯tun]を ツヌの ように 表記する 方法も あ
ったかとも 思われますが、漢語音を
より忠実・正確に
表記
する
方法として、この「おしまいの
ン」を 発明した の で
しょう。
t-n音の2音節語
ヤマトコトバの
t-n 2音節語では、名詞が いくつか 成立して いますが、動詞は
1個も 成立して
いません。やむを
えず、3音節
動詞を
参考に
して 話を すすめます。
名詞:タナ[棚・板挙]・タニ[谷]・タネ[種]・チナ[千名]・チニ[海鯛]・ツナ[綱]・ツネ[常]・ツノ[角]・トネ[刀禰・利根]・トノ[殿]。
動詞:タノム[頼]・チヌル[血塗]・ツナグ[繋]・ツナム[嗜]・トナフ[唱・称]・トナム[歴](めぐる)。
上代語
から
現代語に
いたる
まで、t-n 2音節の 動詞の 存
在を しめす 文献資料が 見あたらない
ことは
事実ですが、
タヌ・チヌ・ツヌ
など
2音節
動詞を
成立させる
一歩 てま
え
まで
進んで
いたと
考える
ことは
できます。
漢語では、たくさんの t-n音語が 成立して います。たとえば
[トンduen屯tun]の ばあい、[t = ツキデル 姿 ]+[n = ノ
ビル・ナル姿]、つまり「春に なって、草の芽が
地上に
ツ
キダシ、ノビデル 姿」=ツノ[角]の 姿 です。すこし 視点を
変えれば、タムロ[屯]する
姿
です。
ツキデル 姿
の ナリモノ
が ツナ
ツナ
や
ツノ
は、どうしてtuna, tunoの ような 語音に なった ので しょうか?それは、「ツキデル 姿 の ナリモノ」だった から と 考えられ ます。かりに 動詞 ツヌを 想定して
いえば、ツナは
その
未然形
兼
名詞形、ツネは
已然形
兼
名詞形、ツノは
ツナの 交替形 という
ことに
なる
計算
です。
ツナ[綱]・ツノ[角]で ツナグ[繋]
画像を
ごらん
ください。「カード64」(t-n音)の 1枚 です。牛の ツノ[角]の 絵は、「ツキデル 姿 の ナリモノ」と いえます。また、「牛の 頭と ツノ[角]が ツナガル 姿」とも いえます。
牛と
ツナと
クイの
絵
も、ただ
3個の
モノを
えがいて
い
る
わけ
では
なく、牛の頭とクイを
ツナで ツナグ
姿を
えが
いて
いる
のです。ツナガル
という
点では、「牛の頭と
ツ
ノ[角]の ツナガリ」と おなじです。
しっかりした
ツナで ツナグ ことが できれば、長期間に
わたって
ツネに かわらない ツナガリを もつ ことが できる わけ です。
タナと タニと
タネの ツナガリ
タナ[棚・種]と タニ[谷]と タネ[種・胤]の ツナガリに ついても、かりに
動詞タヌを
想定して
整理する
ことが
できます。動詞タヌの
未然形
兼
名詞形が
タナ[棚・種]、連用形
兼
名詞形が
タニ[谷]、已然形 兼 名詞形が タネ[種・胤] という ことに なります。
「そんな
リクツっぽい
こと
いわれて
も、分かり
にくい
だ
け」と
おっしゃる
かも
しれません。
それでは、こんな
ふうに
考えては
いかが
でしょうか?
ヤ
マトコトバで
タと
いえば、[手・田]=ツキデル もの。ナと
いえば、[菜・魚・名]=ナリモノ。「平らに ツキデル・ノ
ビヒロガル」姿の ナリモノと いえば、まず テノヒラ。そして、やがて タナ[棚・店]です。
タナ[店]に ついては、漢語 テンtam店dianの 音形との 関連
も あり、このあと t-n音漢語の
項で
あらためて
とりあげる
予定です。
また、「まっすぐ
ツキヌケル・ツラヌク」姿の 血統や 遺伝
子が、タナ・タネ[種]です。
さらには、「上下に
ツキヌケル」地形が、タニ[谷]です。
トノ・トネと ツナの
ツナガリ
貴人の
住む
御殿が
トノ[殿]。朝廷に つかえる官人が トネ[刀禰]。「坂東太郎」とも
よばれる
日本一の
大河が
トネ[利根]川。いずれも 「デーンと 構えて、泰然自若」、まわり
から「タノミの ツナ」と される 存在です。
タナ・タニと ダン[段]の ツナガリ など
タナ[棚]・タニ[谷・渓]と 漢語 タン・ダン[端・断・段]との ツナガリも 気に なります。
トノ[殿]と 漢語 デン[殿]の ツナガリも おもしろそう です。 ⇔トナメ[臀呫](交尾)。
ツナtuna(マグロ)は、ツナ[綱]・ツノ[角]の姿
ツナ缶の
ツナtunaは 英語で、マグロの こと。まさし くツナ[綱]・ツノ[角]の 姿を もつ
魚です。巨大な
体型です
から、缶詰に
して
保存すれば、長期に
わたり、ツネに
人の
命を
ツナグ
ことが
できます。タノミの ツナ ですね。
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