2014年1月21日火曜日

カヌ[兼]姿、カム[噛]姿


k-n音の日本語②…
 
「カード64k-m
 
 



カヌ[] カヌ[不勝・不得]との ムジュン
前回 k-n 日本語を とりあげた なかで、 k-n音の 基本義が しだいに わかって きました。しかし、基本的な 問題で まだ ワカラズジマイの ままに なって いる ことが あります。2音節 動詞 カヌ[](下二) カヌ[不勝・不得](下二) との ムジュン関係を どう解釈するか という 問題です。

まったく おなじ 音形・活用形で あり ながら、一方は「二つの ものを 一つに あわせる」姿 であり、一方は「~するに たえない。ガマン できない」姿と されて います。同一の時代(上代)、同一の 地域社会(ヤマト地方)で、プラスと マイナス 正反対の ことを、同一の 語音 カヌkanu あらわして います。「見のがし カネル」問題だと おもいます。

今回は、まず「k-n 基本義の2面性」の 問題に ついて 考えて みる ことに します。

 

n- 基本義の2面性
カヌ[](下二) カヌ[不勝・不得](下二)との ムジュン 関係は、どこ から きた のでしょうか?

イズミ仮説 では、「コトバの 意味は、その コトバを 構成する 音節の 意味の 連合」 です。したがって、カヌの 基本義は「ka 基本義」と「nu 基本義」との 連合という ことに なります。ただ、カヌ[] カヌ[不勝] ばあい、ムジュンする 基本義を 生みだした おもな 原因は、ka ではなく、nu音に あると 考えられます。いいかえれば、もともとn-子音の 基本義に2面性 あり、それが nu カヌkanuなどに もちこまれた という こと です。

 

n-子音の 調音方法と 基本義
ここで、n-子音の 調音方法と 基本義との 関係を おさらいして おきましょう。

調音方法…①舌の先で イキの 流れを 止めるイキの 流れが 鼻に ヌケ、鼻腔をナラシながら 発声する。

基本義…調音方法① から「[勿・莫]・ナシ[]No, not」の 基本義が 生まれ、② から「ナル・ニル・ヌル・ネル・ノル」などの 基本義が 生まれる。

単音節語[勿・莫]・ナ[菜・名] (ナル もの)・[荷・土・丹] (ナル・ノル もの)[寝・去] (ヌケル・ノビル 姿)[音・鳴・根・嶺・寝](ナの 母音交替)・[野・箭・笶] など。

2音節語ナシ[]・ナル[成・鳴・生・為・狎]・ニル[似・煮]・ヌル[]・ネル[寝・練]・ノル[乗・宣・罵] など。

 

k-n音と k-m音との 関係
カヌ[](下二) カヌ[不勝・不得](下二)との ムジュン関係に ついては、「n-子音の 基本義 そのものに 2面性が ある」という ことで、いちおう ナットクできる ところ まで きました。そこで、もう ひとつ 気に かかる 問題が あります。それは、カヌkanu カムkamu などの 語音を めぐって、そこに n-m- 子音交替 関係 考えられ ないか という 問題です

カヌ[] カム[] ばあい、音形の 面でも 意味用法の でも、いちおう はっきりと 区別が ついて いて、それ 自体 なんの 問題も ありません。しかし、k-n から k-m音へと 変化した される コトバが ある ことも 事実です。

たとえば、現代語で キツネの 鳴き声は コンコン ですが、上代語では コム[來許武] 表記されて いた ようです。また、童謡「雪や こんこ」に ついても、もともと「雪や コムコム[来来](雪よ、降れ降れ) 意味だ されて います。

ついでに いえば、上代語 m- から 現代語n-音に 変化した もの として、ミナ[]→ニナ、ミラ[] →ニラ などが あります。

 

k-m音のコトバ
ここで k-m音語に ついて つっこんだ 話を する よゆうは ありませんが、k-n音との 関連で、基本的な こと だけ チェックして おきましょう。

ヤマトコトバの k-m 2音節語には、動詞 カム[噛・醸]・キム[決・極]・クム[組・汲・酌]・コム[子産・混・籠・込] 名詞 カマ[鎌・窯・釜・蒲]カミ[髪・上・噛・神・紙]カメ[亀・瓶]カモ[]キミ[君・公・黍]キメ[決・木目]キモ[]クマ[隈・熊]クミ[組・汲]クメ[久米]クモ[雲・蜘蛛]コマ[駒・高麗・独楽]コメ[]コモ[菰・薦] などが あります、

いちがいには いえませんが、動詞 中心に 名詞 そのほかの 品詞語 派生し、おおきな 単語家族 形成して いると 考えられます。たとえば;

カム(カミつく) ものが カマ[鎌・窯・釜・蒲]カミ[髪・上・噛・紙]カメ[亀・瓶]

カミつかれる姿がカミ[]

クネクネイリクム[入組] 地形が クマ[]。そこに スミコム[住込] 動物が クマ[] など。

 

m-子音の 調音方法と 基本義
ここまで きた ついでに、m-子音の 調音方法と 基本義との 関係に ついても チェックして おきましょう。

調音方法…①いったん クチビルを とじ、クチの 中に イキを ウメ[]コム(ためこむ)。②その イキをクチビル から モラス[] 姿で 発声する。

基本義…調音方法 から、ウム・ウメル[] 基本義が 生まれ、② から、ウム[生・産]・ウマレル・モル・モレル・モラス などの 基本義が 生まれる。プラス イメージと マイナス イメージと 2面性 もつ 点で、n- よく にている。

 

クネル姿、トリクム姿
ここまで 見て きた ところ、子音 n-m-には 一定の 共通感覚が あり、それが k-n音語とk-m音語との 対応関係を もたらして いる のではと 考えられます。たとえば;

カネル 姿は、二つの ものを ミあわせる・クミあわせる 姿。

カネ[]が「(撞木を カミこんで)ネ[] ナラス[成・鳴] 姿は、カメ[]が「(穀物を カミこんで) 酒を カモシだす」姿に 通じます。

AB 地区が クネクネ クネリ あって クニ[]づくりする 姿は、男と 女が カネアウ[兼合]・クナガウ[婚合](つながる)姿と おなじ。つまり、カミアウ[噛合]クミアウ[組合] 姿です。

刈りとった キミ[] おしい 食品に しあげられるか どうか?そえは、ウス[] キネ[] カネアイ・カミアワセ・クミアワセで キマル ことに なります。

 

キヌ[] ケン[]、カナウ[] can など
ここまで、日本語 k-n音の 基本義に ついて 考えて きました。

ただし、日本語という ワク 中で 考えて きた だけ なので、もし 漢語・英語 などのk-n まで ワクを ひろげて 比較し 議論する ことが できれば、もっと おおくの おもしろい ことが 発見できる だろうと おもいます。

さしあたり 思いつく のは、日本語音 キヌ[] kinu 漢語音 ケン[]あるいは 日本語音 カナウ[] kanau 英語音 can など です。
どこまで 追求できるか 分かりませんが、次回は k-n 漢語を とりあげる 予定です。

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