『古事記』解釈の キーワード㉒
日漢英k-p音語の 対応関係を さぐる
前回は、k-p音の 日本語が 基本的に「カブリつく」、「クヒつく」姿を
あらわあす
ことを
見て
きました。この
ことは
日本語だけの
現象で
しょうか?それとも、漢語や
英語のk-p音に ついても 共通に 見られる 現象で しょうか?まずは 漢語のk-p音語から 見て みましょう。
k-p音 漢語の 基本義
現代漢語にk-pタイプの 音節は ありません。しかし、上古漢語では 少数派 ながら k-pタイプの 音節が 成立して おり、そのご 語尾子音 -pが 脱落した ことが 分かって います。ここで、これまで 採集できた k-p音 漢語を ざっと まとめて みます (主として、『学研・漢和大字典』に
よる。ただし、忠実な
引用には
なって
いない
ので、責任は
引用者に
ある。漢字音の
表記は、日本漢字音・上古漢語音・漢字・現代漢語音の
順に
よる)。
カブル・カブセル
姿
カイ・ガイkab蓋gai4 おおう。ふた。かさ。けだし。なん
ぞ~せざる。*ムシロや
草ぶきの
屋根を
カブセル
さま。
⇔カブ・カブト・カブル。カフ[蓋]。Cap, cover.
カフ・ケフkap甲jia3 かぶと。よろい。カメ・カニ・昆虫などの
固い
カラ。*甲骨文は、ウロコの
象形モジ。金文
以後は、タネを
とりまく
固い
カラ(=カブルもの)の
象形モジ。 ⇔カブ・カブト・カブル。Cap, cover.
カフkap閘zha2 水を 閉じて とめる 水門。*クグル 姿=カ
ブル 姿。
カフ・ガフhep合he2, ge3 あう。あわせる。あつまる。あつめる。*甲骨文は、アナに
フタを
カブセて、ピタリ
合わせる
姿。カフ[盍・盒]と同系。
カフ・ゲフhap洽xia2, qia4あまねし。うるおす。やわらげる。*うるおって、ぴったり調和する
こと。
カフ・ケフkap袷jia2, qia1アワセ。*もう 1枚 カブセル、あ
わせる
姿。
カフ・コフkep閤ge2, he2 くぐり戸。*クグル姿=頭に
カブル 姿。
カフ・ガフhap盒he2 ふたもの。*フタ=カブル もの。
カフ・ガフhap盍he2 おおう。ふた。なんぞ~ざる。*皿に
ガブリと
フタを
かぶせる姿。
カフ・ガフhab蓋he2, ge3 草ぶきの屋根。とま。*カフ[甲]と 同系。⇔カブ・カブト・カブル。Cap,
cover.
キ[來]て フル[振]・フレル[触] 姿
キフgiep及ji2 およぶ。およぼす。*逃げる人の背に追う人
の手がとどいたさま。
キフhiep吸xi1 すう。*口が ものに とどいて パッと すい
つく さま。
キフkiep汲ji2 くむ。*水面に つるべを とどかせ、急いで
ひきあげる さま。
キフkiep急ji2 いそぐ。せかせかと。*せかせか、追いつ
こうと する 気持ち。
キフkiep級ji2 品。等級。クビ。*一段 また 一段と 糸を つぎ足す こと。キフ[吸・給]などと 同系。⇔キフ[來経]。Give.
キフk’iep泣qi4 なく。なみだ。*息を すいこむ ように し
て、せきあげて なく こと。キフ[急・吸]などと 同系。
kiep給ji3, gei3 たりる.たす。あたえる。たまう。*織り糸の
欠けた
ところを
すぐ
つぎあわす
こと。その時、その場に、キ[來]て フル[振]・フレル[触] 姿。キフ[及・吸]などと 同系。⇔キフ[來経]。Give.
カバフ 姿、クヒコム 姿カバフ・協力する
姿と
クヒコム・脅迫する
姿は、外見だけ
では
見分けが
つかない
ことが
あります([協:脇:脅]に かぎらず、言語一般に
ついて
起こりうる
現象ですが)。
ケフhap協xie あわせる。かなう。*三つの チカラを あわ
せる。⇔カバフ。Cover.
ケフhap挟xie2,jie1はさむ。さしはさむ。
カフ・ケフkap夾jia1,2 はさむ。わきばさむ。アワセ[袷]。*両わきに 子分を かかえ、両側から 守られて、大の 字 型に 立つ 親分の 姿。ケフ[挟・峡・狭]などと 同系。
ケフkap莢jia2 さや。*両方から はさむ 外皮。⇔カフ[飼]・カハ[皮・革・側]・カバフ。Cover, keep.
ケフhap侠xia2男だて。*両わきに 子分を かかえ、守られ
て いる 親分の 姿。
ケフkap頬jia2 ほお。*顔を 両側から はさむ (カブリつ
く)姿。
ケフkap鋏jia2 はさみ。*はさむ もの。⇔カフ[交]・カヒ
[交・貝・峡]。
カフ・ケフhap峡xia2 狭間。*山あいの せまい 谷間。⇔
カヒ[峡・貝]。
カフ・ケフhap狭xia2せまい。せばまる。せばめる。
ケフhiap脇 xie2 ワキ。*両脇から はさむ 姿。
ケフhiap脅xie2おびやかす。おどす。おびえる。わき。*一つの
語音が、「姿は
よく
似て
いる」が、「別の
意味」、もしくは「まったく
逆の
意味」を
表わす
ことが
ある。ケフ[協:協:脅]が その例。両脇をハサム姿は、「ささえる」姿でも
あり、「おびやかす」姿でも
ある。
次回は k-p音の 英語
予告 どおり、今回は k-p音の 漢語を とりあげ、k-p音 日本語 (ヤマトコトバ)と 比較し、その 共通基本義を さぐって みました。漢語 カフ[甲]と 日本語 カブトとの 対応関係などに ついては、同感して いただけた でしょうか?ケフ[夾・峡]と カヒ[貝・峡]、キフ[級・給]と キフ[來経]との 対応関係に かんする 解説に ついては。「話が ウマ すぎる」、「一方的な コジツケ」と 感じられた かも しれません ね。次回は、cap, cover, giveなどを ふくめ、k-p音 英語との 共通基本義を さぐります。
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