『古事記』解釈の
キーワード⑧
カム・クム姿、A
カム・クム姿、B
カム・クム姿、Ⅽ
画像に
ついて
イラスト「カム・クム姿、A」は、切り絵 作家 梶川 之男さんの 作品。Bと Cは、ネット から 借用させて いただきました。
いま
なぜ k-m音語 か?
前号まで 3回に わたって、s-r音の コトバに ついて 考えて きました。すこし
時間を
かけすぎた
感じも
します。これからは、なるべく
1回 ごとに まとめる ように 心がけます。
さて、s-r音の あと どんな 語音を とりあげるか 迷った あげく、今回は k-m音を とりあげる ことに しました。いま なぜ k-m音か?その 理由の 一つは、日本海悠学会の10月研修会で 藤田 富士夫 さんが「カムナビ[神奈備]山」という 地名を 中心に 議論を すすめられた こと です。
(当日の 藤田さんの 講演に ついて イズミの 感想を ブログ「いたち川 散歩」11/6号に 記しました ので、ご参照 いただければ 幸せ です)
k-m音論議の視点
わたしは 藤田さんの 「考古学の 手法に したがって、あくまで
真実を 追求する」という 基本姿勢に 敬服して います。そして、コトバの
研究者の
一人
として、地名・人名などに
ついても「考古学の
手法」を
参考に
して
研究を
すすめる
べきでは
ないかと考えて
います。具多的に
いえば、「単語家族(語根と 派生語)の 研究」や「日漢英の 音韻 比較 研究」などの 成果を 利用する ことに よって、より 客観的・合理的な
議論ができる という こと です。
しかし、日本語を めぐる 学界 では、文法・語法に かんする 研究は 花ざかり ですが、音韻面 からの 研究は 極端に 不足して います。たとえば
辞典で
単語の
解説を
見る
場合、英語の 辞典 では、その 単語の 家族(語根と
派生語)関係や
音韻変化の
歴史などに
ついて
解説して
あるのが
常識 ですが、日本語の 辞典 では、この 常識が 通用して
いない よう です。
この 問題は、単なる 技術的な 問題では ありません。日本語とは
どんな
コトバか、そもそも
コトバとは
ナニモノか?
つまり、言語観の 問題 です。
いいかえれば、ヤマトコトバの
k-m音語や s-r音語 だけ さぐって いる よりも、漢語や 英語の k-m音語や s-r音語と 比較研究する ほうが、より 客観的・合理的に
「k-m音や s-r音の 基本義」を とらえる ことが できる という こと です。
k-m音 論議の あゆみ
じつは、この ブログで k-m音語を とりあげる のは、今回が はじめて では ありません。2013年1月~2月、4回に わたって 日漢英の k-m音語を とりあげ、共通基本義を
さぐって
います。
2013.1.15.
「カム・クム姿」…カム[甘]・キム[今・衾・禁]=カム・コモル 姿。
2013.2.1. 「k-m音の 日本語」]…カム もの が、カマ[鎌・釜…カミ[噛]と カミ[神]の ちがい]…甲乙カナヅカイ説 への 疑問。
2013.2.9. 「k-m音の 英語」…Comeは、カム[噛] 姿…Gameは、カミ[噛]あう 姿…Companyは、クミ[組]あう 仲間。
2013.2.19. 「日漢 k-m音語の カミあわせ」…「漢字物語」を 読む…「国語教科書や 新聞・雑誌は タテガキ」という 「日本の常識」は
「世界の非常識」。
『古事記』の
中の k-m音
以上の しだいで、ここで
あらためて
k-m音の 基本義を 議論する ことは しません。ただ、『古事記』の 中の k-m音語に ついて ざっと まとめて おく ことに しましょう(平凡社、『古事記総索引』による)。
Kam-: カマ[鎌・釜・蒲]・カミ[上・髪・醸・噛・神]・カム[噛・神・上]・カメ[亀]・カモ[鴨・哉]。
Kim-: キマス[來・到来・服]・キミ[君・王・夫子]・キモ[肝]・キモノ[衣服]。
Kum-: クマ[熊・隈]・クマル[分]・クム[組・酌]・クメ[久米]・クモ[雲]。
Kom-: コマ[馬]・コム[子産・金]・コモ[薦・海蒪]・コモル[隠]。
人の
ふり 見て…
「人の 振り 見て、我が 振り
直せ」という コトワザが あります。日本の 国の ことは知りつくしたと
思っていた
日本人が
外国に
住んで
みて、はじめて
日本の
本当の
姿が
見えて
きた
という
話を
よく
聞きます。コトバに
ついても、おなじ
ことが
いえます。日本語の
世界で
生活して
いる
だけで、日本語の
ことが
すべて
分かる
という
保証は
ありません。外国語(漢語や 英語など)と 比較し、共通点や 相違点を たしかめた 段階で、はじめて「日本語とは、こういう
コトバ
なのだ」と
気づかされる
点が
たくさん
あります。
k-m音, s-r音に かぎらず、これまでの「常識」を いっぺん ワキに おいて、日本語の 音韻組織を 見なおし、じぶん
でも
ナットクが
ゆき、外国人
にも
分かって
もらえる
ような
言語観や 音韻感覚を 身に つけたい もの です。そう なれば、日本語でも
外国語でも、頭の中で
いちいち
翻訳する
こと
なく、自由自在に
キク・ハナス
ことが
できるように
なる
でしょう。
21世紀 日本語の 音韻感覚
むかし、ヤマト朝廷の 時代、日本語と いえば、いわゆる
ヤマトコトバ
だけ
でした。やがて
中国 から 漢字・漢文が 伝来するに つれて、ヤマトコトバの
中に
すこし
ずつ
漢語が しみこんで ゆきます。
江戸幕府の 鎖国政策の あと、明治の 開国政策と ともに 英語 などの 外国語が 伝来し、いわゆる
カタカナ語
として
定着。さらに、第2次 世界大戦の あと、日本語の 中で 英語が 漢語に つぐ 重要な 地位を 占める ことに なります。
21世紀 日本語は、ヤマトコトバと 漢語、および 英語 などの カタカナ語 との チャンポン語 状態
という
のが
実態です。
では、日本人の 音韻感覚は どうか?ヤマトコトバの 音韻感覚に あわせた 音図が「五十音図」。たいへん よく できて いますが、漢語や
英語
などに
適用
しようと
しても、ほとんど
役に
立ち
ません。
21世紀 日本語は、ヤマトコトバと 漢語・英語 など との チャンポン語 なの ですから、それらの コトバに 共通する「現代日本語音図」を つくり、全国に ひろめる べきだと 思います。
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