2013年9月9日月曜日

m-k音の漢語


m-k音のコトバ④…

「漢字物語」156イラスト
 
 
 「漢字物語」182イラスト
 
 
 
 「漢字物語」188イラスト
 
 
 
 「漢字物語」189イラスト
 
 
 
 「漢字物語」207イラスト
 
 
日漢m-k音の共通基本義をさぐる
おまたせ しました。これまで 日本語(ヤマトコトバ)の m-k音に ついて、マキムクを中心に 基本義を さぐって きました。このへんで、こんどは 漢語の m-k音に ついて 基本義を さぐり、日本語との 共通点や 相違点を 考えて みたいと 思います。
具体的には、これまで どおり 小山鉄郎さんの「漢字物語」(「白川静文字学入門」、北日本新聞連載中) 中から m-k音語を えらび、その 字形解説の 線に そって、音韻の からm-k音語の 基本義や 単語家族組織に ついて 考える ことに します。
紙面の つごうで、小山さんの 解説を くわしく ご紹介する ことが できません。はまむら ゆう さんの イラストが たいへん 分かり やすく できて います ので、画像として 借用させて いただきました。
 
草葉の カゲに マカル[] 姿
画像「漢字物語」156 イラスト [莫・墓・幕] ごらん ください。音符と なる マク・バクmakmu 字形 から、モ・ボmagmu マク・バクmakmuなどの 字形が うまれた こと が、ひと目で 分かる ように なって います。モジは、まず コトバがあって、それを カタチ として のこす ための もの です から、ここでは マク・バク[]という コトバ(音形) から モ・ボ[] マク・バク[]などの コトバ(音形・意味用法)が派生したと 考えて よい でしょう。
マク・バク[莫・幕]は、「草むらが マク[幕・膜] なって(草にマギレ[])、その ムコウ[向] 見えない」さま。 
モ・ム[]は、「草むらに 日が 沈む、マク・マカル[]」時間帯。
モ・ボ[]は、「草むらに マギレ[] 土盛り」。死者が マカル[] ところ。
 
神を マギ もとめて マウ[舞]、ミコ[]
画像182 イラストを ごらん ください。「衣の 袖に 飾りを つけ、その 袖を ひるがえして 舞う」女性の 姿を えがき、ム・ブ[無・舞・蕪] 3字が 共通の 音形や 基本義をもって いる ことを 解説しています。
ム・ブmiuag無・舞・蕪wu.
マウ[]は、もともと 神の メグミ マギ もとめて、手足を 体に マキつける 行為。キリキリマイして、神に 身を ささげる、参る(舞い入る)姿。つまり、マカル[罷・被巻]姿。
ム・ブ[]は、もと[] 意味 だった のです が、マウ[]ときの 心理状態 から [無私・無心] などの 意味用法が おおく なって きたので、同音の [] 字形を つくって使い分ける ように した という わけ です。
ついでに いいますと、この「神の前で舞う人」を ヤマトコトバでは ミコ[巫女] よびます。やはり、m-k音の コトバ です。漢語では ム・フ・ブmiuagwu。基本的に、[無・舞]と同音・同義の コトバと 解されて います。
このように 見て くると、漢語の ム・ブ[無・舞] ム・フ・ブ[] もともとm-k音語であり、ヤマトコトバの マク[巻・罷]・マグ[覓・曲]・マカル[]」あるいは ミコ[巫女]などの m-k音と、どこかで つながって いる コトバ だと 考えられます。
さて、同一の 漢字を (呉音)・ブ(漢音)・フ(慣用音) などと 読みかえて いる ことに 疑問を 感じる 人も おられると 思います。この点に ついては、m, p, b, f いずれも クチビルで 調整される 子音 なので、音韻感覚にも 共通点が おおく、地域や 時代の ちがいに 応じて、しばしば 交替する 現象が 見られます。日本語 でも、よく 見られる 現象です。
小川さんは「両袖を 広げて 舞う []や、さらに 両足を 広げて 舞う []には『豊かで 大きい』意味が あります」と解説し、その例として ム・ブ[蕪](根の 球形部が 豊かで 大きな 野菜。カブ・カブラ)を 紹介して います。
わたしは 小川 さんが、m-k音語の ム・ブ[無・舞・蕪]に「豊かで大きい」意味が あると指摘された 点に 注目します。このあと「ムクムク 目を ムク 姿」 項で、あらためてとりあげます。
               
マカル・マガル・ミマカル
画像188、189 イラスト では、モウ・ボウ[] 字形を もつ 漢字に ついて 解説して います。 モウ・ボウmiangwang ほろびる。なくなる。手足を 折り曲げた 死者。
モウ・ボウmiuangwang。意識に 存在しない こと。
モウ・ボウmangmang。ぼんやり として、間のぬけた さま。心が まともに 存在しない。
モウ・ボウmiuangwang 女性に 心が まどわされ、われを 忘れた ふるまいを する。
[] 字形に ついて『学研・漢和大字典』では、「[]印を丨印(ついたて) L(囲い)で 隠す さま」と 解説して います。いずれに しても、モウ・ボウ[亡・忘・忙・妄]m-k音語であり、マク[巻・罷]・マグ[]・マカル[]・マガル[]・ミマカル[身罷]姿を もって います。その点で、ヤマトコトバの m-k音と 同源の 可能性が あると 思います。
なお、小川 さんは [] 字形を ふくむ 漢字として コウ[荒・慌・肓] なども とりあげて おられますが、それらはk-k音に 分類される 語音 なので、ここでは とりあげ ません。
 
マキバ[牧場]は、マク[][]
ヤマトコトバと 同源かと 思われる 漢語音は、ほかにも いろいろ あります。その 一つとして、 モク・ボク[] ご紹介します。 
 モク・ボクmiuekmuオス・メスの 牛・馬・羊 などを マカ[巻・娶]せ、子を 産ませる こと。モ・ボ[母]、マイ・バイ[毎・媒]と 同系の コトバ。牛馬など だけ でなく、人に ついても [牧民・牧師] などと いいます。
マク[] []だから、マキバ[牧場] という ことに なります。マク[] 姿と マク[負・罷] 姿 とは、ちょっと 見た ところ ムジュンした ようにも 見えますが、総合して はじめて m-k音語の 体系が できて います。それが マキムクの 世界です。
 
ムクムク目を ムク姿
マク・ムク 姿 いえば、漢語モク・ボクmuk目・木mu なども そうです。朝の 日光が ヒトの [] 刺激し、マブタを マキあげ、メダマを ムキだしに します。また、春から 夏に かけて 日光を ムカエ つづけた 木は、ムクムク 枝を はりだし、葉を しげらせ、生命力を ムキだしに します。
草木が ムクムク 成長する 姿は、さきに あげた ム・ブ[](カブラ)の「豊かで大きい」イメージに つながります。さらに いえば、おなじくm-k音語の マ・バmagma もつバカでかい 威力・生命力にも つながります。ただし、そこまで くると、日本語・漢語のワクを こえて、m-k音の 英語 なども ふくめて 考えて みた ほうが よいかも しれません。
 
マギもとめて いた ムギ[] 來た
画像207 イラスト では、ライ[]・バク[] などの 字形が 紹介されて います。
ライmleglai。もと「穂が 垂れて 実った 小麦」を 描いた 象形文字。やがて、「來る」の 意に 専用。
ミャク・バクmluekmai西方 から 伝来した 食品。マギもとめて いた 天の メグミ
ライ[]は、もと ml- という 複子音 もつ コトバ でしたが、やがて 頭子音m- 脱落した ライ[]と、l-子音が 脱落した ミャク・バク[]とに 分かれました。その 音形・字形変化の 経過は、そのまま「マギもとめて いた ムギ[] マカリコシタ[罷來・伝来] 歴史事実の 証言 見る ことが できます。

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