…m-k音のコトバ④…
「漢字物語」156イラスト
「漢字物語」182イラスト
「漢字物語」188イラスト
「漢字物語」189イラスト
「漢字物語」207イラスト
日漢m-k音の共通基本義をさぐる
おまたせ しました。これまで 日本語(ヤマトコトバ)の m-k音に ついて、マキムクを中心に
基本義を
さぐって
きました。このへんで、こんどは
漢語の
m-k音に ついて 基本義を さぐり、日本語との 共通点や 相違点を 考えて みたいと 思います。
具体的には、これまで どおり 小山鉄郎さんの「漢字物語」(「白川静文字学入門」、北日本新聞連載中)の 中から m-k音語を えらび、その 字形解説の 線に そって、音韻の 面 からm-k音語の 基本義や 単語家族組織に ついて 考える ことに します。
紙面の つごうで、小山さんの 解説を くわしく ご紹介する ことが できません。はまむら ゆう さんの イラストが たいへん 分かり やすく できて います ので、画像として
借用させて
いただきました。
草葉の カゲに マカル[罷] 姿
画像「漢字物語」156の イラスト [莫・墓・幕]を ごらん ください。音符と なる マク・バクmak莫muの 字形 から、モ・ボmag墓muや マク・バクmak幕muなどの 字形が うまれた こと が、ひと目で 分かる ように なって います。モジは、まず
コトバがあって、それを
カタチ
として
のこす
ための
もの
です
から、ここでは
マク・バク[莫]という コトバ(音形) から モ・ボ[墓]や マク・バク[幕]などの コトバ(音形・意味用法)が派生したと 考えて よい でしょう。
マク・バク[莫・幕]は、「草むらが マク[幕・膜]に なって(草にマギレ[紛]て)、その ムコウ[向]が 見えない」さま。
モ・ム[暮]は、「草むらに 日が 沈む、マク・マカル[罷]」時間帯。
モ・ボ[墓]は、「草むらに マギレ[紛]た 土盛り」。死者が マカル[罷] ところ。
神を マギ もとめて
マウ[舞]、ミコ[巫]
画像182の イラストを ごらん ください。「衣の 袖に 飾りを つけ、その 袖を ひるがえして 舞う」女性の 姿を えがき、ム・ブ[無・舞・蕪]の 3字が 共通の 音形や 基本義をもって いる ことを 解説しています。
ム・ブmiuag無・舞・蕪wu.
マウ[舞]は、もともと 神の メグミを マギ もとめて、手足を
体に
マキつける 行為。キリキリマイして、神に 身を ささげる、参る(舞い入る)姿。つまり、マカル[罷・被巻]姿。
ム・ブ[無]は、もと[舞]の 意味 だった のです が、マウ[舞]ときの 心理状態 から [無私・無心] などの 意味用法が おおく なって きたので、同音の [舞]の 字形を つくって使い分ける ように した という わけ です。
ついでに いいますと、この「神の前で舞う人」を ヤマトコトバでは ミコ[巫女]と よびます。やはり、m-k音の コトバ です。漢語では ム・フ・ブmiuag巫wu。基本的に、[無・舞]と同音・同義の コトバと 解されて います。
このように 見て くると、漢語の ム・ブ[無・舞]や ム・フ・ブ[巫]は もともとm-k音語であり、ヤマトコトバの
「マク[巻・罷]・マグ[覓・曲]・マカル[罷]」あるいは ミコ[巫女]などの m-k音と、どこかで つながって いる コトバ だと 考えられます。
さて、同一の 漢字を ム(呉音)・ブ(漢音)・フ(慣用音) などと 読みかえて いる ことに 疑問を 感じる 人も おられると 思います。この点に ついては、m, p, b, fは いずれも クチビルで 調整される 子音 なので、音韻感覚にも 共通点が おおく、地域や 時代の ちがいに 応じて、しばしば
交替する 現象が 見られます。日本語 でも、よく 見られる 現象です。
小川さんは「両袖を 広げて 舞う [無]や、さらに 両足を 広げて 舞う [舞]には『豊かで 大きい』意味が あります」と解説し、その例として
ム・ブ[蕪](根の 球形部が 豊かで 大きな 野菜。カブ・カブラ)を 紹介して います。
わたしは 小川 さんが、m-k音語の ム・ブ[無・舞・蕪]に「豊かで大きい」意味が
あると指摘された
点に
注目します。このあと「ムクムク 目を ムク 姿」の 項で、あらためてとりあげます。
マカル・マガル・ミマカル
画像188、189の イラスト では、モウ・ボウ[亡]の 字形を もつ 漢字に ついて 解説して います。 モウ・ボウmiang亡wang。 ほろびる。なくなる。手足を 折り曲げた 死者。
モウ・ボウmiuang忘wang。意識に 存在しない こと。
モウ・ボウmang忙mang。ぼんやり として、間のぬけた さま。心が まともに 存在しない。
モウ・ボウmiuang妄wang。 女性に 心が まどわされ、われを 忘れた ふるまいを する。
[亡]の 字形に ついて『学研・漢和大字典』では、「[人]印を丨印(ついたて)や L印(囲い)で 隠す さま」と 解説して います。いずれに しても、モウ・ボウ[亡・忘・忙・妄]は m-k音語であり、マク[巻・罷]・マグ[曲]・マカル[罷]・マガル[曲]・ミマカル[身罷]姿を もって
います。その点で、ヤマトコトバの m-k音と 同源の 可能性が あると 思います。
なお、小川 さんは [亡]の 字形を ふくむ 漢字として コウ[荒・慌・肓] なども とりあげて おられますが、それらはk-k音に 分類される 語音 なので、ここでは とりあげ ません。
マキバ[牧場]は、マク[娶]バ[場]
ヤマトコトバと 同源かと 思われる 漢語音は、ほかにも いろいろ あります。その 一つとして、 モク・ボク[牧]を ご紹介します。
モク・ボクmiuek牧mu。オス・メスの 牛・馬・羊 などを マカ[巻・娶]せ、子を 産ませる こと。モ・ボ[母]、マイ・バイ[毎・媒]と 同系の コトバ。牛馬など だけ でなく、人に ついても [牧民・牧師] などと いいます。
マク[娶] バ[場]だから、マキバ[牧場]だ という ことに なります。マク[娶] 姿と マク[負・罷] 姿 とは、ちょっと 見た ところ ムジュンした ようにも 見えますが、総合して
はじめて
m-k音語の 体系が できて います。それが マキムクの 世界です。
ムクムク目を ムク姿
マク・ムク 姿 と いえば、漢語モク・ボクmuk目・木mu なども そうです。朝の 日光が ヒトの メ[目]を 刺激し、マブタを マキあげ、メダマを ムキだしに します。また、春から 夏に かけて 日光を ムカエ つづけた 木は、ムクムクと
枝を
はりだし、葉を
しげらせ、生命力を
ムキだしに します。
草木が ムクムク 成長する 姿は、さきに あげた ム・ブ[蕪](カブラ)の「豊かで大きい」イメージに つながります。さらに いえば、おなじくm-k音語の マ・バmag馬maが もつバカでかい 威力・生命力にも つながります。ただし、そこまで
くると、日本語・漢語のワクを
こえて、m-k音の 英語
なども
ふくめて
考えて
みた
ほうが
よいかも
しれません。
マギもとめて いた ムギ[麥]が 來た
画像207の イラスト では、ライ[來]・バク[麥] などの 字形が 紹介されて います。
ライmleg來lai。もと「穂が 垂れて 実った 小麦」を 描いた 象形文字。やがて、「來る」の 意に 専用。
ミャク・バクmluek麥mai。西方 から 伝来した 食品。マギもとめて いた 天の メグミ。
ライ[來]は、もと ml- という 複子音を もつ コトバ でしたが、やがて
頭子音m-が 脱落した ライ[來]と、l-子音が 脱落した ミャク・バク[麥]とに 分かれました。その 音形・字形変化の
経過は、そのまま「マギもとめて
いた
ムギ[麥]が マカリコシタ[罷來・伝来] 歴史事実の 証言と 見る ことが できます。
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