2013年8月18日日曜日

m-k音のコトバ(つづき)

 
『カード64』m-k 
 
 
ゴブサタしました
しばらく ゴブサタ しました。お盆 とも なれば、お墓まいり にも ゆかねば ならず、親類縁者 との おつきあい あります。毎年 応募して いる 同人雑誌の 原稿 シメキリも8月下旬 です。それより なにより、ながびく 猛暑の せいで、さらには お歳の せいで、カラダの うごきが にぶく なり、頭の 回転も…
グチを いっても しかたが ありません。この へんで、方針転換。ヒラキナオル ことに しました。いまさら カッコ つけて みても、どうにも なりません。あせらず、のんびり、マイペースで やらせて いただきます。おゆる しください。
 
マギ求めた ムギが やって 来た
前回 予告した ムギの 話を はじめ ましょう。
ムギ[]という コトバは、『古事記』にも 記録されて いて、ヤマトコトバと 考えて よいでしょう。ただし、「神代の巻…天照大神と須佐之男命…五穀の起源」の項に 1回 でてくる だけ です。スサノオ命が オオゲツヒメ神に 食物を 要求した ところ、ヒメ神の 頭にカイコ[]、二つの 目に イナダネ[稲種]、二つの 耳に アワ[]、鼻に アズキ[小豆]、ホト[] ムギ[]、尻に マメ[大豆] 生って いた という 記事です。
ここで、イネ・アワ・アズキ・ムギ・マメは 五穀の うち だから よいと して、衣料品をつくる ための カイコ まで 食物と よぶのは ユキスギでは ないか という 疑問も でてきます。念のため、ネットで しらべて みました。すると、国内 でも、海外 でも、貴重な タンパク源として 食用に、また 魚の エサ用に されて きた ことが 分かりました。『古事記』の 記事は、けっして デタラメでは なかった ことに なります。
『古事記』神代の巻で「五穀の起源」が 語られて いる という こと は、ヤマト政権が 成立した 当時の 日本列島で、イネ・アワ・アズキ・ムギ・マメ などの 五穀が 重要な 食料資源 として 認識されて いた という ことに なります。
ひとくちに ムギ いっても、コムギ・オオムギ・ハダカムギ など、いろんな 種類が あります。ムギの 原産地は 中近東、ペルシャ湾 沿岸 あたり され、日本列島へは 縄文時代 後期 から 弥生時代 前期に かけて 伝来した よう です。ムギ イネは おなじくイネ科植物。現代 でも、人類に とって もっとも 重要な 食料 されて います。『古事記』の 記事は、「五穀豊穣」、イネ・ムギ・マメ などの 植物が伝来し、生産されて いる こと への 感謝や 自信、あるいは 決意の 気持ち あらわした もの 考えられます。
 
どうして ムギ 呼ばれたか?
それにしても、ムギは どうして ムギmugi 呼ばれる ことに なった ので しょうか?
ムギは 漢字で バク(ミャク)[] 書かれます。上古漢語(推定)mluek、現代音maiBC 10世紀ごろ、中央アジア から 周=いまの 中国陝西省に もたらされた 植物 なので、周の 人々は、これを 神の もたらした 穀物 として 珍重し、ライライボウ[来来麰] 呼んだ されて います。ボウ()[] 漢語音はmiogmou、オオムギのことです。
mluek[]miog[]は、いずれもm-k音の コトバで、ムクムク 出て来る 姿を 連想させます。日本語の ムギ[]m-k音グループ です から、ひょっとして 同族語かも しれません。
 
m-k音の 意味
わたしは『カード64』の なかで、m-k 日本語の 文句を こう 表現しました。
ムギ マク。土 マキつける。
ムクムク ムク。
ムギ[]・マク[]・マキ[]・ムクムク・ムク[向・剥] などの コトバは、具体的には それぞれ ちがった 姿を あらわして います。しかし、すこし だけ おおまかな 目で 見れば、共通する 姿を みとめる ことが できます。その 共通基本義の カナメに なる ものが m-k音です。
ムギの タネを マク[] には、地面に バラマキ した だけ では、カラスの エサに なるだけ かも しれない ので、ちゃんと 土を マキ[] つけて おかねば なりません。地中に マカリ[]こした ムギは、いったん ミマカル[身罷](死亡) 姿と なりますが、やがてムクムク 目を ムキ[向・剥]、芽を ムキダス[剥出] ことに なります。そして 、一粒の ムギの ミマカリが、やがて 数十・数百粒の ミノリを もたらす ことに なります。
 
マク・マカ・マキの 造語法
日本語 でも 漢語 でも、それぞれ 多数の m-k音語が 成立して いて、民族語の ワクをこえて 共通の 基本義が 見られる ことも 事実 ですが、その 造語法には かなり おおきな チガイが ある 思います。まずは 日本語の 造語法に ついて 考えて みましょう。
日本語の ばあい、より 正確に いえば ヤマトコトバの ばあい、動詞形の 語尾母音(基本形は -u) -a, -e, -i 変える だけで、名詞形を つくる ことが できます。たとえば;
    動詞 マク[巻・任・負・設] たいして、名詞 マカ(タチ)[侍者]・マケ[負・設]・マキ[] 成立。*マク・トリマク ものが マカ(タチ)[侍者]。敵に トリマカレ、身を マカセル 姿が マケ[]。トリマク 設備が マケ[]→マケミゾ[儲溝]。マク こと、ものが マキ[]
    動詞 マグ[覓・曲] たいして、名詞 マガ[曲・禍]・マゲ[]・マギ[] 成立。
この タイプの 造語法は、ヤマトコトバの 動詞・名詞 一般に ついて 見られる もので、m-k音に かぎらず、k-m音でも k-t音でも おなじです。たとえば;
    動詞 カム[]:カマ[鎌・窯]・カメ[瓶・亀]・カミ[髪・上・噛・紙・神]。*いずれも、カム・カミコム・カマエル、もしくは カミコマレル・コモル 姿 です。
    動詞 カツ[搗・勝]:カタ[形・型・方・片・肩]・カテ[]・カチ[勝・徒歩]。*カツは もと カツカル・ブツカル こと。やがて カチワル・カツ[]cutするの 意味に。敵をカチワル ことが できれば、カチ[]。道中を 一歩 づつ ブンカツ[分割]cutして 歩む 姿が カチ[徒歩]。食糧 全体の から、一部 カットして 旅行・行軍 などの ため貯蔵された 糧食が カテ[]
 
英語でもmake, maker, making
ところで、この 造語法、ヤマトコトバ だけの 専売特許 では ありません。英語 でも;
    make(動。作る), maker(名。作る人), making(名。作ること)
    come(動。来る),  comer(名。来る人),  coming(名。来ること)
    cut(動。カチワル。切る), cutter(名。カチワルもの。型), cutting(名。カチワルこと。切断)
動詞語尾を -a または -i型に する ことで、「~するもの」、「~すること」を 意味する名詞形を つくる ことが できる という 点で、日本語と 英語は きわめて ちかい 音韻感覚を もって いる いえ そうです。
しかし、このタイプの造語法は、漢語の 世界 では 見あたり ません。それは、漢語の 音節構造が 基本的に CVC型(中間に 母音を はさみ、語頭・語尾を 子音で かため るタイプ) だから ですが、くわしい ことは 次回に まわし ましょう。

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