「現代日本語音図」部分
「日本のまんなか富山弁」
カチワルものがカツ[勝]
「カード64」(k-t)
「教育文芸とやま」14号
日漢英のコトダマくらべ
きょうから あらためて、「日本語と漢語と英語のコトダマくらべ」シリーズをはじめたいと思います。学術研究ふうにいえば、音韻比較ということになります。ただし、わたしの勉強不足で、この分野でのまともな研究報告資料を目にしたことがありません。そこで、たいへん恐縮ですが、とりあえず、わたしの独断と偏見にまみれた「音韻比較」・「コトダマくらべ」についてご報告させていただきます。しばらくおつきあいくださるよう、お願いします。そのうえで、「ここがまちがっている」、「この資料を勉強してからモノをいえ」など、お気づきの点を教えていただければ、ありがたいと思います。
きょうから あらためて、「日本語と漢語と英語のコトダマくらべ」シリーズをはじめたいと思います。学術研究ふうにいえば、音韻比較ということになります。ただし、わたしの勉強不足で、この分野でのまともな研究報告資料を目にしたことがありません。そこで、たいへん恐縮ですが、とりあえず、わたしの独断と偏見にまみれた「音韻比較」・「コトダマくらべ」についてご報告させていただきます。しばらくおつきあいくださるよう、お願いします。そのうえで、「ここがまちがっている」、「この資料を勉強してからモノをいえ」など、お気づきの点を教えていただければ、ありがたいと思います。
「8音図」・「64音図」で比較する
日本語と漢語と英語は、それぞれちがった音韻感覚の言語、つまり相互に異質の言語と考えられているようです。異質なもの同士で計量比較しても、あまり意味のある結果がでるとは期待できません。3言語の音韻比較には、まずなんとかして3言語ともに等質の比較資料(素材)を準備しなければなりません。
日本語と漢語と英語は、それぞれちがった音韻感覚の言語、つまり相互に異質の言語と考えられているようです。異質なもの同士で計量比較しても、あまり意味のある結果がでるとは期待できません。3言語の音韻比較には、まずなんとかして3言語ともに等質の比較資料(素材)を準備しなければなりません。
英語などインド・ヨーロッパ語族の言語については、各民族言語について「語根と派生語の関係」を中心に「単語家族」の研究がすすんでいて、民族言語間の音韻比較資料(素材)としても利用できるようになっています。日本語や漢語についても、同様な手続きで、同様な音韻調査資料がそろえば、英語などとの音韻比較ができるようになるでしょう。
いいかえれば、日漢英の3言語を「人類語の1方言」として同格・同類に見ることから、3言語の音韻比較の道がひらけてきます。モノの比較には、共通のモノサシが必要。音韻比較には、「母音と子音の区分」や「語根と派生語の関係」がモノサシになります。
人類のコトバは、さまざまなオトで成り立っていて、数えようもありませんが、つまるところ母音と子音の結合であり、オトをはなれてコトバは成立しません。音韻比較とは、どんなオトでどんな意味を表わしているかの比較です。
そのためには、3言語に共通のモノサシとして、無数にある母音や子音をなるべく少数のワクに分類するのが便利です。理論上はいろいろな分類法が可能だと思います。イズミの場合、現代日本語のためという実用性も考えて、「8音図」、「64音図」という2段階の分類法を考案しました。日本語のヤマトコトバだけでなく、漢語や英語についても共通の音韻感覚で比較できるようにと考えてみました。
たとえば、「コト・コトバ・コトダマ」や「カツ・カタ・カタチ・カタドル」などはすべてk, t子音を共有しているので、64音タイプ中のk-t音タイプとして分類します。同時に、漢語カツ[割]や英語cut, cutter, cuttingなども、おなじk-t音タイプとして分類し、比較できるという趣向です。なお、くわしくは「現代日本語音図」(2008年)をご参照ください。
カツカルとカチワル
コトダマくらべのコトハジメは、k-t音タイプのコトバからということにしました。日漢英ともに、かなり使用頻度の高い語音タイプです。
コトダマくらべのコトハジメは、k-t音タイプのコトバからということにしました。日漢英ともに、かなり使用頻度の高い語音タイプです。
富山の方言で、「ブツカル・ブツケル」の意味で「カツカル・カツケル」などといいます。また、水車小屋や精米所のことをカッチャ[搗ち屋]、ウチコムことをカチコム、ウチワルことをカチワルなどといいます(簑島良二著、北の本新聞社発行、「日本のまんなか富山弁」を参考)。いずれも、カツ・カチなどk-t音タイプのコトバです。
k-t音の上代日本語に、カツ[且]・カツ[勝](動四)・カツ[合](動下二)などの用例があります。カツ[搗]の上代語用例は見あたりませんが、これらカツ・kat-音のコトバには、なにか基本的に共通なイメージがつきまとっています。それは、①カツカル(ブツカル)姿、②(その結果として)カチワル(ウチワル・ブチコワス)姿です。
カチワルものが、カチ[勝]をカチトル
たとえば剣道の試合で、A君がB君とカツカル(ブツカル)場合、A君のシナイがB君の面をカチコムことができれば、A君のカチ[勝]となります。また、クリやクルミは、カタいカラをカチワル(cutする)ことで、うまい中身をカチトル(getする)ことができます。つまり、カラと中身にブンカツ[分割]する姿です。
たとえば剣道の試合で、A君がB君とカツカル(ブツカル)場合、A君のシナイがB君の面をカチコムことができれば、A君のカチ[勝]となります。また、クリやクルミは、カタいカラをカチワル(cutする)ことで、うまい中身をカチトル(getする)ことができます。つまり、カラと中身にブンカツ[分割]する姿です。
カツものがカタ、カツことがカチ
ヤマトコトバのカツ・カタ・カチと英語のcut, cutter, cuttingとのあいだには、みごとな対応関係が見られます。動詞カツ(カツカル・ブツカル・cut)をベースにして、カツものがカタ(型・cutter)、カツことがカチ(勝・徒歩・cutting)というふうに、日英共通の音韻組織原則みたいなものができています。この現象は、もちろんk-t音動詞だけではなく、k-r, t-k, m-kなど、どの音タイプの動詞についても同様です。ただし、漢語では音節の組織が特殊な構造なので、こうした現象は見られません。
ヤマトコトバのカツ・カタ・カチと英語のcut, cutter, cuttingとのあいだには、みごとな対応関係が見られます。動詞カツ(カツカル・ブツカル・cut)をベースにして、カツものがカタ(型・cutter)、カツことがカチ(勝・徒歩・cutting)というふうに、日英共通の音韻組織原則みたいなものができています。この現象は、もちろんk-t音動詞だけではなく、k-r, t-k, m-kなど、どの音タイプの動詞についても同様です。ただし、漢語では音節の組織が特殊な構造なので、こうした現象は見られません。
カタ[形・像]…カチワル・ケヅル・カタドルことでgetされるカタチ。
カタ[型・cutter]…簡単に、正確にカタドリ・cuttingできる道具。
カタ[方・肩・潟]…カツ(搗・割・cut)ことで生じる方向・体型・地形。
カタ[片・頑]…カチ割られたもの。①カタワレ。②カタヨリすぎている。
カチ[徒歩]…両足をコンパスとして、1歩ずつ大地をカチワル、cuttingの姿。
カタ[型・cutter]…簡単に、正確にカタドリ・cuttingできる道具。
カタ[方・肩・潟]…カツ(搗・割・cut)ことで生じる方向・体型・地形。
カタ[片・頑]…カチ割られたもの。①カタワレ。②カタヨリすぎている。
カチ[徒歩]…両足をコンパスとして、1歩ずつ大地をカチワル、cuttingの姿。
コトバ、コトのハ、one cut
カタル[語]とは、コトバをならべてカタ・カタチ[形]をつくること。起承転結のあるモノガタリをつくることです。カタルというコトバは、語根kat-に-r子音がついてできた派生語。カタリは、動詞カタルの基本形katar-の語尾に-i母音がついてできた名詞形。
カタル[語]とは、コトバをならべてカタ・カタチ[形]をつくること。起承転結のあるモノガタリをつくることです。カタルというコトバは、語根kat-に-r子音がついてできた派生語。カタリは、動詞カタルの基本形katar-の語尾に-i母音がついてできた名詞形。
コトは、カタの母音交替形
コト[事・言]…宇宙空間におこる森羅万象をk-t音で切りとった(cut)もの。コトバ[言葉]は、コト[言]のハ[端]、カタリのone cut。
コト[琴]…中空にカットされ、共鳴装置をもつ弦楽器。神のコト[事・言]をカタル楽器とされていた。
コト[毎・殊・異]…カットされたカタワレ。クヅ[屑]。ケヅリカス[削り糟]。本体とはコトナル[異]。こまかに見れば、ひとつコト[事]ゴト[毎]にコトナル[異・殊]。
コト[事・言]…宇宙空間におこる森羅万象をk-t音で切りとった(cut)もの。コトバ[言葉]は、コト[言]のハ[端]、カタリのone cut。
コト[琴]…中空にカットされ、共鳴装置をもつ弦楽器。神のコト[事・言]をカタル楽器とされていた。
コト[毎・殊・異]…カットされたカタワレ。クヅ[屑]。ケヅリカス[削り糟]。本体とはコトナル[異]。こまかに見れば、ひとつコト[事]ゴト[毎]にコトナル[異・殊]。
なお、日漢英k-t音語の音韻比較資料としては、「カード64」(2005年)や「コトバはカタリのワンカット」(「教育文芸とやま」14号所載、2007)などもご参照ください。
0 件のコメント:
コメントを投稿