…日漢英の 音韻対応関係を さぐる…
日漢英 音韻比較の 現状
ヨーロッパや アメリカの コトバに ついては、インドを ふくめて「インド・ヨーロッパ語」と
よばれ、各民族言語の
音韻組織の
実態、また
民族言語間の
音韻対応関係
などが
しだいに
あきらかに
されて
います。しかし、日本語や
朝鮮語・漢語
(中国語) などに ついては、そこまで 作業が すすんで いません。民族言語の
音韻を
比較する
には、まず
双方
から
等質の
言語材料が
提供され
なければ
なりません。つまり、共通の
土俵や
モノサシが
必用
です。ところが、いわゆる「漢字
文化圏」の
研究者たちの
あいだでは、欧米の
それとは
一味
ちがった
言語観が
ただよって
いて、「等質の
言語材料」の
選定作業も
できて
いない
段階です。
いま 日本では、小学校
から
英語教育が
実施されて
います。しかも、ネライは
「耳で
聞いて
分かる」、「自分の
口で
思いを
伝える
ことが
できる」英語の
学力だと
されて
います。目標を
設定する
ことは
必要です。しかし、学習の
到達目標を
設定する
だけで、(これを
保証する
だけの、客観的・合理的・効果的な)学習指導法を
しめさないのは、文教当局として
無責任だと
いわれないで
しょうか?
もともと、日本語と
漢語(中国語)・英語
などとの
音韻比較と
いう
基礎研究も
できて
いない状態で、客観的・合理的・効果的な
外国語
学習
指導法を
開発できる
でしょうか?
いずれに しても、この 分野での 基礎研究は、国際水準(欧米語)に
くらべて
数十年
おくれて
いると
考えられます。
ケン[犬]が ネル 小屋が kennel (?)
さて、本題の k-n音語の 話に もどり ましょう。いきなり「k-n音の 日本語と 英語の共通感覚」と
いわれても、すぐには
思い
つかない
のですが、たとえば「イヌコロの
ケン[犬]が ネル 小屋 だから kennelだ」 などと いう 解説を 耳に した ことは あります。ただの ゴロ あわせ だろうと 思って 無視して いましたが、こんど
念のため
英語辞典で
kennelを しらべて みると、「語根kwon- (dog いぬ) の 派生語で、hound猟犬, canaryカナリア, canineイヌ科 などと 同系の コトバ」と 解説されて いました。ここまで くると、ただの ワライバナシでは
すまなく
なって
きます。
イヌの 呼び名と しては、日本語でも
イヌの
ほかに
ワン ちゃんが あります。イヌは、その 生態(=猟犬が 目標に むかう 姿 = 矢が イヌ[去]の 姿)からの 命名。ワンは擬声語。漢語では、ケン[犬]の ほかに ク[狗]が あります。ケン[犬]は、「キャンキャンと鳴く」音声からの 命名、ク[狗]は「(猟犬が)身を カガメル、クネラセル」姿勢からの 命名と 考えられます。いずれに
しても、もとは
擬声・擬態語から
はじまった
可能性が
あります。
canary は 鳥の ナマエですが、命名の 由来は「カナリア 諸島(アフリカ 大陸の 北西 沿岸に 近い 大西洋上)に 住む 鳥」だった から との こと。カナリア島の
ラテン語名はInsula Canaria(=犬の島)。つまり、カナリアは鳥のナマエとなるまえに、まずイヌを意味するコトバだったわけです。その証拠に、カナリア諸島
自治州の
紋章には、7つの 島々を はさんで 身をクネらせた一対の 犬の 姿が 描かれて います。
kingと イザナキの
役割
英語辞典 AHDに よれば、kingは、語根 gene-(子を 産む)からの 派生語で、kin, kind, engine, natve, natureなどと 同系と されて います。また、queenも 語根 gwen- からの 派生語と いう ことです。 King とqueenの 関係は、日本語の
イザナキと イザナミの 関係に あたります。イザナキの
キは、キ[杵・酒・寸・割・木・牙]に
通じる
コトバで、男性の シンボル。イザナミの ミは、ミ[水・神・見・三]に 通じる コトバで、「産み
育てる
もの」、女性の シンボル です。
Kingや イザナキは、queenや イザナミの 協力を えて、クネクネ 諸国を めぐり、kin親族を その 土地に 根付かせ、native土着の nation 国民・国家を 産みだし、育てあげ ました。この 大事業を すすめる エンジンの 役割を はたした のが、kingや イザナキ だったと いえます。
キネ・コネルと knead
King・イザナキと いえば、かなり おおげさな 話に なりますが、もっと
身近で
ちんまり
した
k-n音語も あります。日本語の キネ・コナ・コナス・コネルと 英語の knee, kneadなど との 関係を 考えて みましょう。
日本語では、上代語の 段階で キ[杵・木・割・寸]・キネ[杵]が 成立して いますが、コナ・コナス・コネルなどの 用例は 見あたり ません。キネの キkiは、「k-する こと、もの」の 意。キネkineは、「キ[杵・木]の ネ[根]」と 解釈して よいと 思いますが、「キ[杵]が ヌ[寝・去]する こと」は、「精米・精粉の
作業」あるいは
コネル
作業
であり、その作業の
根幹を
らわす
動詞が
ク[來・消]・ヌ[寝・去]、名詞が キ[杵・寸]・ネ[音・根・寝](=ナ[菜・名])と 考え られます。「キ[杵]が キ[來]て、ネル[寝・練]」=「コネル[捏]=knead」=「食べやすい
食品が
できる」という
わけ
です。
英語でも、kneeひざ, kneelひざまづく などは 語根 genu- (knee,
angle) からの 派生語、know知る, canできる などは 語根 gno- (to know) からの 派生語と されて います。kneeは ひざ関節の こと。この 関節部分が クネル 角度を 調節する ことに よって、立つ、ひざまづく、歩くなど、自由に 運動 できる(カナウ、can)ことに なります。
Knowが どうして シル[知]の 意に なった のか? すこし 分かり にくい のですが、同音の
gnaw (歯で カム。カジル) など から 連想して、グニャグニャ・カム・カジル 姿から、やがて シル[知]・knowの 意味用法が 生まれた ことが 推定 できます。日本語の
シル[知]も、もとは「(シル[汁]が 出る まで)スル[擦]・コスル・カジル[齧]」姿を あらわす コトバ です。
カン[凵]と can(鑵)と can (できる)
英語 know, can などが グニャグニャ・カム・カジル
姿
だったと
なると、k-n音語の姿が しだいに はっきり 見えて きます。
英語のcanには 「~できる」の ほかに、「(カンヅメの)カン[鑵]」の 意味用法が あります。まったく 別の コトバとも いえますが、音韻の 面から 同系の コトバ とも いえます。この canは、音義とも 漢語の カン[鑵・凵・函]と 一致します。いま 日本では カンヅメを [缶詰]と 書く のが 普通 ですが、この 字形 [缶]は 当て字です。カン[鑵]は カン[灌]と 同系で、「水を そそぐ、金属製 容器」の 意。カン[凵・函]は スミ[隅]を 凵型に クネらせた 容器の 姿。直線状の キ[杵]や 平面状の キヌ[衣]を クネラセル ことで、水や 酒などの 容器(=カメ)としての
用法も
カナウ(= can)ように した もの です。
こまかい 話に なりますが、カン[凵・函]は 上古音 k-m(カム[噛] 姿)から、やがて k-n音に 合流した 語音 です。この 音韻変化の 実態を つかむ ことが できれば、より 深くk-n音 漢語を 理解できる ことと 思います。
k-n音の ナゾ、いろいろ
竹・籐 などの 茎、また その茎で つくった ツエ・ステッキを
caneと よぶ そうです。AHDの「IE語根と 派生語」には 見あたらない よう ですが、ME<MF<Ⅼ<Gk まで さかのぼれる コトバ です。ひょっとして、漢語
カン[干・竿・稈・幹]グループとの 関連を 示す 資料が 見つかる かも しれません。
ついでに いえば、knollには 「小山・小岡」と「カネ[鐘]を ナラス[鳴]」と 両方の 意味が あります。日本語の ノルにも ノル[乗]と ノル[宣・告]の 意味用法が あります。客観的に 見て、土石が つぎつぎ ノル[乗・載] 姿 = 山・岡の 姿で あり、音声が 音波に ノル 姿= ノル[宣・告]・ナル[鳴] 姿です。つまり、日本語 ノルと 英語knollとは、共通の 感覚から 生まれた コトバと 思われます。
さらに ヨクばって いえば、英語 knob(= knop = 取っ手), knot (結び目), knuckle (拳骨)などと 漢語の コン[根・痕・恨]・ケン[巻・拳]などに ついても、共通する
姿
(カンセツ[関節]を 使って クネクネ 動く 姿)を よみとる ことが でき そう です。ただし、正式に 断定する には、もうすこし 資料を あつめ、検討する
時間が
必要な
ようです。
Knee, knowの
k-が 発音され ない
ワケ
それに しても、knead, knee, knowなどの 頭子音k-は どうして 発音されない のでしょうか? むかしは その とおり 發音されて いた コトバが、時代の 変化と ともに 音声言語に 変化が おこり、語頭のk-子音が 脱落した。しかし、書面言語と
しては
(慣性の 法則で) もとの つづりの まま のこって いる、と いう こと でしょう。つまり、日本語の「歴史カナヅカイ」みたいな もの です。あるいは、接頭辞(トリアツカウ・トリカエル・トリシマルの
トリ など)に 近い 用語法と 見る ことも できる でしょう。
k-n音語根と その
派生語
ここまで、「k-n音の英語」に ついて、また「k-n音の 日本語・漢語との 対応関係」について、あれこれ さぐって きました。わたしの
学習不足で、論じ
つくせ
なかった
こと、見のがした
こと
など、いろいろ
ありますが、今回は
ここまでと
させて
いただきます。
さいごに、k-n音 英語 研究の 基礎資料と して、AHD (アメリカの 遺産・英語辞典)フロク「IE語根と その
派生語」の 中から 関連項目を 引用・紹介 します。語根・基本義・派生語の
順に
記述されています。引用項目の
選定や
日本語訳、および
*印
以下の
注などは、イズミの
責任です。
Gene- (to give birth子を 産む, beget子を もうける) kin親族, king王, kind親切な1, kind2種類, gentle優しい, general一般の, genius天分, engineエンジン, nation国民, native土着の, nature自然. *キ[杵](男性)が ヌ[寝]して、子を 生ませる 姿。 ⇔キ[杵・寸・生]・キネ[杵]。
Genu-1 (kneeヒザ関節, angle角度) knee, kneelひざまづく, diagonal対角線. *自力では身動き
できない
身体各部を、カンセツ[関節]の はたらきに よって、自由に うごかすことが デキル ように なる。⇔カヌ[兼]・カナウ[叶]・カナメ[要]。ケン[兼]。Can.
Genu-2 (jawboneアゴの 骨) chinアゴ. *アゴ 関節の 筋肉に よって、上アゴに ヒッカカリ、上下に
動く
装置。 ⇔キン[筋・緊]・ケン[懸・腱]。
Ghans- (gooseガチョウ。ガン) goose1, goslingガチョウの
ヒナ, ganderガチョウの ヒナ. *もと 擬声・擬態語か。
⇔ガン[雁]。
Ghend- (to seizeつかむ, take手に 取る) get手に いれる, forgetわすれる, guess見当つける, prison刑務所, appre-hend逮捕する, comprehend理解する, surpriseビックリ させる, prey犠牲者. *カム[噛]・カミトル 姿か、あるいは ミ[見・視]ツケル 姿か。⇔カム[噛]・カン[監]。
Gno- (to know知る) know, can1できる, cunning器用な,
notice通知, recognize分かる, ignore無視する, noble高尚
な, narrateものがたる. *グニャグニャに
なる
まで
かみ
くだき、消化
しやすく
する
こと。⇔クニャクニャ・グ
ニャグニャ。Gnaw (歯でカム。かじる).
Gwen- (woman婦人) queen女王. *kingや キ[杵]の 語音が
直線的・攻撃的な イメージを もつ のに くらべ、gwen-, queenは 曲線的・平和的(受容的)な イメージを もつ。
Gwhen- (to strike打つ, killころす) bane破滅, gun銃, defendふせぐ, fence垣根. *基本義
不明。⇔カン[垣](かき・かきね)・ケン[圏]・コン[困・梱]。
Kan- (to singうたう) henめんどり, chant, accentアクセント, enchant魔法にかける, incentive誘因, charm魅力. *カ(鳥の 鳴き声)が ナル[成・鳴] 姿。⇔カン[喊・喚]。
Kand- (to shineかがやく) candidate志願者, candleローソク, candor誠実, incense香を たく. *カ(香など)が ナル[成]・ネマル・タツ[立]・タダヨウ 姿。⇔カナヅ[奏]・カキナヅ[掻撫]。
Kenk- (to gird巻く, bindしばる) cinch馬の 腹帯, precinct区域, succinct簡明な. *巻きつける姿。⇔ケン[巻・捲]。
Kens- (to proclaim宣言する, speak solemnly 重々しく 言う) censor検閲係, census人口調査. *コトバ(=ゲン[言])が ツキサス姿。⇔ケン[検・険・験]・ゲン[言・厳]。
Kent- (to prickつきさす, jab突く) center中心, eccentricとっぴな. *キ[杵]・キネで ツク・ツキサス 姿か。⇔センtsiam 尖 jian (とがる)。
Kom- (besideわきに, nearちかくに, byそばに, with~と ともに) enough十分な, co-接頭辞, contra-接頭辞, contrary反対の, counter1対戦者, countyクニ[国], encounter遭遇.
*k-m音語だが、しばしば
k-n音語との 交替関係が 見ら
れる。たとえば、country=クニ[国]=隣接する地域を
combinateクミあわせ、connectツナギ あわせた もの。ま
た、counter1対戦者 とは、ゲームの 場で イガミあう(ク
ミ[組]あう)相手。⇔(カヌ[兼]・カネ[金・鐘]・
クニ[国]) : (カム[噛]・カメ[瓶・亀]・クム[組]・ク
ミ[組]・コム[籠]・コマル[困])。
Konk- (to hangひっかける) hang, hinge蝶つがい. *Aが Bに ヒッカカル 姿。Aを Bに ヒッカケル 姿。また、Aが カナメと なって Bと Cを つなぐ 姿。 ⇔カナメ[要]・
クナグ[婚]・クネル。
Kwon-
(dogいぬ) cynic皮肉屋, hound猟犬, dachshundダッ
クスフンド, canaryカナリア, canineイヌ科, kennel1イヌ小
屋. *もと 擬声・擬態語か。イヌ(=ク[狗])が 身を
クネらせる 姿か。⇔ク[狗]・ケン[犬]。