『古事記』解釈の キーワード⑩
k-m音の コトバ
k-p音の コトバ
画像に
ついて
「カード64」の 中から 引用しました。イラストの
切り絵は、梶川 之男 さんの 作品です。
10月の 日本海悠学会 研修会で 藤田富士夫さんが 「古代の神奈備山を探る視点」と 題して 講演された ことは、ブログ「いたち川散歩」(11/6)で ご紹介 しました。藤田さんはカムナビ[神奈備]を「神の ヘ[辺]=神の イマス[座] ところ」と 解釈した うえで、その呼び名に ふさわしい 条件を 設定し、自分の 足で 現地を まわり、自分の 目で 「カムナビ山」の 所在を たしかめようと されました。その 姿勢に、脱帽して います。
しかし、せっかく「カムナビ山」に
ついて
考えると
すれば、やはり
まず
第一に「カム[神]」という コトバの 意味・用法を 確認して おく ことが 必要かと 思います。
日本語の「カム[神]」とは ナニモノか?日本人に とって、どんな 存在だった のか?なぜ、カム
という
語音で
よばれる
ことに
なった
のか?同音の
日本語
カム・カミとの
関係は?漢語や
英語 k-m音との 関係は?
『古事記』の中のk-m音語
『古事記』に でて くる k-m音語を ざっと ひろって みます。
カマ[鎌・竈・蒲] // カマフ[蒲生] //
カミ[上・髪・醸・神・祇] //
カムホグ[神寿] //
カムヤマトイハレビコ[神倭伊波禮毘古] // カムヤラヒ[神遣] // カメ[亀] //
カモ[鴨]。
キマス[來・到・服・赴] // キミ[君・王] // キモ[肝] //
キモノ[衣服]。
クマ[熊・隈] //
クマノ[熊野] // クム[組・酌] // クメ[久米] //
クモ[雲] 。
コマ[馬] // コム(子産)// コムハチニカニキム[金波鎮漢紀武] // コモ[海蓴・薦] // コモル[隠]。
*『記』では、カムカラ・カムサブ・カムシム(=カムサブ)・カムナガラ・カムナビ・カメ[瓶]・クモ[蜘蛛] などの 用例が 見あたり ませんが、『萬』には、いずれも 用例が あります。カムガフ[考] ・カモ[氈] などは 『記』・『萬』ともに 用例が ない よう です。
*コムハチニカニキム[金波鎮漢紀武]は ヤマトコトバでは なく、シラギ[新良]の コニキシ[国主] からの 使者の ナマエ。ここでは、使者の
姓を
コム[金]と表記して いる点が 参考に なります。
k-m音語の 共通基本義
ここで あらためて k-m音 日本語の 共通基本義を さぐる ことに します。
「k-m音語の 意味は、k-音と m-音が もつ 意味の
総合」ですが、ここで k-音と m-音の基本義に ついて オサライして いる 時間が ありません。いきなり ですが、まず イズミの 結論(仮説)を 提案して、議論の たたき台に して いただけたらと 願って います。
①
K-m音語は カム・クム・コム
など
いろいろな
音形の
コトバに
分かれるが、k-m音を 共有する ことに よって、基本義を 共有し、単語家族を 形成する。k-m音語 同士の 意味の チガイは ニュアンスの チガイ。大同の 中の 小異に とどまる。
②
カム[噛・神]は、カイガラが ミ[身]を カム[噛] 姿。視点を かえれば、貝(の身)が
カイガラに
カミつき、食いこみ、その
中に
コモル姿
でも
ある。カミ[噛・髪・上・守](ミは 甲類 カナ)は、上・外から
カミつく
姿。カミ[神] (ミは 乙類 カナ)は、カミつかれる 姿。中に コモル 姿。
③
クム[組] とは、Aと Bとを クミアワセル ことで、A、B単独では できない こともできる ように なる。たとえば 水を 飲みたい とき、5本の 指を ばらばらに した ままでは 水を クム ことが できない。5本の 指を クミアワセル、さらには 左右の テノヒラを クミアワセル ことに よって、より 効率 よく 水を クム[汲] ことが できる。
④
コム[子産]は、「子を 産む」姿 でも あり、「子が 産まれる」姿 でも ある。さらには、「子を ウム[埋]」つまり「妊娠する」の 意味を 表わすと 解釈する ことも できる。
カミ[噛・神]と カヒ[貝・峡]との 関係
先日の 「カムナビ[神奈備]山 論議」の あと、ない チエを しぼって、あれこれ 考えて みました。そこで
あらためて
気がついた
ことを
もとに、わたしなりの
新解釈
(仮説)を 提案 いたします。
これまでの「常識」と かけはなれた 解釈 なので、いろいろ
ご批判
いただく
ことに
なる
かも
しれませんが、日本語
(ヤマトコトバ) 本来の 姿を さぐる ための 提案 です。
<仮説>
k-m音語 カム・カミと k-p音語 カフ・カヒは、相互に
交替関係に ある。
<証明>
カムと カフの チガイは、子音 m-と f-との チガイ だけ である。さらに、m- 音と b-, p-, f-音 とは ともに クチビルの 音で あり、しばしば 交替する。たとえば;
カマ[鎌・釜]=草や 柴などに カミつく、カブリつく、クヒつく もの。⇔カハ[河・川・皮・革]。
(カマボコの)カマ[蒲]=(カバヤキの)カバ[蒲]。
カミ[髪]=頭にカミつく、カブリつくもの。⇔カビ[黴]。
カミ[神]=ヒトにカミつく、カブリつく、カフ[飼・養・代・替]もの。⇔カヒ[貝・峡・代・替]
カメ[瓶]=飲食物をカム・コム、コメル、カフ[飼・養]もの。
カハ[河・川・皮・革]=本体(大地や肉体)に カブリつく、カミつく
もの。
カヒ[貝・峡]=カイガラの中にカヒ[貝]の身をカフ[飼・養]、カミコム姿=山と山とのカヒ[峡]にカハ[川]をカフ[飼・養]、カミコム姿。⇔カミ[神]。
その他、キミ[君・王]と キビ[黍] なども m-, b- 子音交替の 例と 考えられる。
k-m音 漢語・英語との 対応関係
ヤマトコトバ だけで なく、漢語や 英語に おいても、k-m音語が 一定の 語彙を 組織し、それなりの 役割を はたして います。また、すこし 気を つけて 観察 すれば、3民族言語の ワクを こえて、m-k音と いう 音形の 共通性に 対応して、意味・用法の
面でも
共通性が
見えて
きます。
k-m音の 漢語
① カム[甘・柑・鉗](中に入れて、カム姿)。② キム・コム[今・金・衿・衾・禁] (中に入れて、トジコメル姿。また、トジコモル姿)。
k-m音の 英語
comb櫛, come來る, combination組みあわせ, company会社, gameゲーム, などの語音には、カム・カミツク・クム・クミアワセル などの 姿が つきまとい ます。漢語 よりも 英語の ほうが 日本語の 音韻感覚に ちかい のでは と 感じられる ことも あります。
日漢英の k-m音語 比較に ついては、この ブログ でも 数回に わたって とりあげて きました。くわしくは、次項の 関係記事を ご参照 くださる よう お願い いたします。
ブログの
参考記事
2013.1.15.
「カム・クム 姿」…漢字音 キム・コム[今・金・衿・衾・禁]…カム[甘・柑・鉗]。
2013.2.1. 「k-m音の 日本語」…カム ものが カマ…カム ことが カミ…カミ[噛]と カミ[神]の チガイ…甲乙 カナヅカイ説への
疑問…クム姿、コム姿。
2013.2.9. 「k-m音の 英語」…comeは、カム[噛・咬] 姿…gameは、カミ[噛・咬] あう 姿…companyは、クミ[組] あう 仲間。
2013.2.19. 「日漢 k-m音の カミあわせ」…「漢字物語」を
読む…ガン・カム[含]は、口に モノを 含ませて フタを する 姿…字形・音形と 意味の 関係…キム[決]・コム[込・篭] 姿…常識が 変わる とき。
2014.11.10. 「再論、k-m音語の 基本義」…k-m音 論議の 視点…21世紀 日本語の 音韻感覚。
<追記>
カムカラ・カムナガラ・カムナビ などの カム・カミの 実態に ついて、「カミ[神]=カヒ[貝]」と する 解釈を こころみ ました。まだまだ 舌足らずの まま ですが、とりあえず 公開して、ご教示を お待ちする ことに します。
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