流行語大賞発表
なでしこジャパン優勝
今年の漢字[絆]
2011年12月13日、北日本新聞記事より |
創作四字熟語
2011年のコトダマ現象
いよいよ年末になりました。ことしの1年間、日本でどんなコトバがサキハヘ(栄え)たか、またそれによって日本の国家・社会にどれほどのサカエ・サキワイがもたらされたか、考えてみたいと思います。つまり、2011年の日本で、どんなコトバが流行し、どんなコトダマ現象がおこり、どれほどのコトダマ効果をあげたかという問題です。てっとりばやい方法として、新聞記事やネットで「流行語大賞」、「今年の漢字」、「創作四字熟語」などをチェックしてみることにします。
いよいよ年末になりました。ことしの1年間、日本でどんなコトバがサキハヘ(栄え)たか、またそれによって日本の国家・社会にどれほどのサカエ・サキワイがもたらされたか、考えてみたいと思います。つまり、2011年の日本で、どんなコトバが流行し、どんなコトダマ現象がおこり、どれほどのコトダマ効果をあげたかという問題です。てっとりばやい方法として、新聞記事やネットで「流行語大賞」、「今年の漢字」、「創作四字熟語」などをチェックしてみることにします。
流行語大賞発表
12月1日、ユーキャン新語流行語大賞審査委員会が今年のトップテンおよび大賞を発表しました。年間大賞は「なでしこジャパン」。以下「絆」「スマホ」「どじょう内閣」「どや顔」「帰宅難民」「こだまでしょうか」「3.11」「風評被害」「ラブ注入」とならびます。
12月1日、ユーキャン新語流行語大賞審査委員会が今年のトップテンおよび大賞を発表しました。年間大賞は「なでしこジャパン」。以下「絆」「スマホ」「どじょう内閣」「どや顔」「帰宅難民」「こだまでしょうか」「3.11」「風評被害」「ラブ注入」とならびます。
この賞は「現代用語の基礎知識」が選定したもの。1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの、だそうです。その審査委員会は、姜尚中(東大教授)、俵万智(歌人)、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、室井滋(女優・エッセイスト)、やくみつる(漫画家)、箭内道彦(クリエイティブ・ディレクター)、清水均(『現代用語の基礎知識』編集長)で構成されています。
ことしの話題は、なんといっても3.11の大災害のことが中心。流行語大賞に「なでしこジャパン」が選ばれたのも、3.11の災害で落ちこんでいた日本人に元気をあたえてくれたからです。また、大賞候補10語のなかに「帰宅難民・きずな[絆]・こだまでしょうか・3.11・風評被害」の5語がはいっています。いずれも、この大災害のなかで生まれたコトバばかりです。
ことしの漢字[絆]
2011年の世相を1字で表わす「今年の漢字」が「絆」に決まり、日本漢字能力検定協会が12月12日、京都市の清水寺で発表しました。選定の理由として、東日本大震災などの大規模災害で、家族や仲間とのきずなの大切さをあらためて知ったことや、ワールドカップで優勝した女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」のチームワークなどがあげられています。2位以下は「災・震・波・助・復・協・支・命・力」の順で、東日本大震災を連想させる漢字がつづきました。
2011年の世相を1字で表わす「今年の漢字」が「絆」に決まり、日本漢字能力検定協会が12月12日、京都市の清水寺で発表しました。選定の理由として、東日本大震災などの大規模災害で、家族や仲間とのきずなの大切さをあらためて知ったことや、ワールドカップで優勝した女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」のチームワークなどがあげられています。2位以下は「災・震・波・助・復・協・支・命・力」の順で、東日本大震災を連想させる漢字がつづきました。
帰路騒然(理路整然)帰宅困難。大地震につづき台風でも。
電考節夏(電光石火)電力不足が広がり、節電を 考えることになった。
天威無法(天衣無縫)災害の前になすすべがない。
愛円義援(合縁奇縁)震災で、海外からも多くの義捐金が寄せられた。
一松懸命(一生懸命)一本の松が復興のシンボルとしてがんばっている。
年年宰宰(年年歳歳)毎年のように総理大臣(宰相)が変わる。
また、入選作40作品の中には、政治関連で賢泥鰌来(捲土重来)、鰌名披露(襲名披露)、社会関連でi悼之意(哀悼之意)(iPhone生みの親、スティーブ・ジョブズ氏の死を悼む)、国際情勢関連で欧州憂慮(欧州ユーロ)などがあります。
さてここで、1990年以来「創作四字熟語」審 査 員をつとめてこられた 俵万智さん(歌人)のコメントを一部引用します。
20年ぶんの創作四字熟語を振り返って、あんなこともあった、こんな年もあった、と感慨深い時間を過ごしました…東西ドイツの統一や同時多発テロなどの世界的な事件、りんごの台風被害や阪神淡路大震災などの日本をおそった天災…懐かしい流行…スポーツの話題、政治の転換などなど。あらゆるジャンルのできごとを、こんなに効率よく、一目で振り返れてしまうところに、四字熟語の底力というものを、あらためて感じます… 携帯電話やインターネットが、またたくまに普及した20年…道具がどんなに変化しても、それを使うのは私たち人間です。四字熟語や漢字のおもしろさをもとに、時代を切り取る脳トレとして、これからも創作四字熟語が、活気をもって作られていきますように!
流行語の身元しらべ
こうしてみると、日本の国はまさしく「コトダマのサキハフ(栄える)国」です。万葉集の時代とちがうのは、ヤマトコトバだけでなく漢語や英語などのコトダマが飛びかっていることです。
たとえば、流行語トップテンの内訳を見ると、ヤマトコトバだけのものが3語(きずな・どやがお・こだまでしょうか)。漢語だけのものが4語(泥鰌内閣・帰宅難民・3.11・風評被害)。英語(?)が1語(スマホ)。ヤマトコトバと英語のチャンポン語が2語(なでしこジャパン・ラブ注入)。なお、3.11は、アラビヤ数字の漢語音読みです。こうしてみると、日本の国はまさしく「コトダマのサキハフ(栄える)国」です。万葉集の時代とちがうのは、ヤマトコトバだけでなく漢語や英語などのコトダマが飛びかっていることです。
「創作四字熟語」を見ても、優秀作品10編はいずれも漢語ふうですが、入選作品40編のなかには、i悼之意(哀悼之意)・欧州憂慮(欧州ユーロ)・楽舞注入(ラブ注入)のように、ローマ字や英語をとりこんだ作品も見られます。
創作四字熟語と脳トレ
俵万智さんがいわれるとおり、「あらゆるジャンルのできごとを、こんなに効率よく、一目で振り返れてしまう」「四字熟語」の創作活動は、「漢字のおもしろさをもとに、時代を切り取る脳トレとして、これからも」ますます活気をもってくるものと期待されます。
わたしがいちばん注目させられたのは、欧州憂慮(欧州ユーロ)や楽舞注入(ラブ注入)の用語法です。ここでは、漢字音ユウリョ[憂慮]と英語音ユーロ[Euro]、また漢字音ラクブ[楽舞]と英語音ラブ[love]をムリヤリ通用させて、「なんとか意味が通じる」ように仕組まれています。俵万智さんがいわれるとおり、「あらゆるジャンルのできごとを、こんなに効率よく、一目で振り返れてしまう」「四字熟語」の創作活動は、「漢字のおもしろさをもとに、時代を切り取る脳トレとして、これからも」ますます活気をもってくるものと期待されます。
見事撫子と大和撫子の場合は、ともにヤマトコトバ同士であり、ミゴトとヤマトも語尾が同音で、全体としてゴロあわせができています。帰路騒然と理路整然の場合も漢語同士であり、帰路と理路、騒然と整然がそれぞれ韻をふんでいるので、いかにも漢語らしいゴロあわせができています。欧州憂慮や楽舞注入の場合は、音韻感覚のちがった漢語と英語のゴロ合わせをしようということで、それだけ高度な脳トレが求められるのだと思います。
ヤマトコトバの見なおしを!
なでしこジャパンは、ヤマトコトバと英語の合成語。きずな[絆]はヤマトコトバ。欧州憂慮や楽舞注入は、漢語と英語のゴロ合わせ。これらのコトバがことしの流行語となり、おおきなコトダマ効果をあげることができたのは、なぜでしょうか?それは、そのコトバを耳で聞いたり、目で読んだりしたとたんに、ある場面が連想され、はげしい感動をよびおこしたからだと思います。
なでしこジャパンは、ヤマトコトバと英語の合成語。きずな[絆]はヤマトコトバ。欧州憂慮や楽舞注入は、漢語と英語のゴロ合わせ。これらのコトバがことしの流行語となり、おおきなコトダマ効果をあげることができたのは、なぜでしょうか?それは、そのコトバを耳で聞いたり、目で読んだりしたとたんに、ある場面が連想され、はげしい感動をよびおこしたからだと思います。
その点から見て、流行語大賞やトップテンになれそうなコトバとしては、やはり日本人の母語であるヤマトコトバが有利です。なでしこジャパンのジャパンはたしかに外来語ですが、いまでは子どもたちもみんな知っているコトバです。きずなの場合も、キズナというヤマトコトバだから「今年の漢字」にえらばれたのであって、漢字音ハンやバンでえらばれたわけではありません。欧州憂慮や楽舞注入がトップテンにはいれなかったのは、高度な脳トレによるゴロあわせ技術をもってしても、素材になるコトバ(ここでは外来語同士)そのものの大衆性不足をカバーできなかったということでしょう。とりわけ、ラブ(love)をわざわざ漢字に書きかえたのは「よけいなお世話」だったような感じがします。
おそらく「ラブ注入では、四文字熟語にならないから」ということなのでしょうが、どうしてカナは「文字」とみとめられないのでしょうか?それとも、「万葉仮名で書けばよい」ということでしょうか?日本語とは?ヤマトコトバとは?文字とは?いちど、じっくり見なおしてみてはいかがでしょうか?